サウンズ・オブ・ア・プレイグラウンド・フェイディング
北欧メロデス界の重鎮、IN FLAMESの10th。バンド結成以来、初めて司令塔イエスパーが不在の状態で制作されたアルバム。
イエスパー不在のまま制作されたアルバムということで、ファンは結構不安ではあると思いますが…
前作まではあった、キラリと光るイエスパー節はない。そしていわゆるメロデスでもなく、これはメタルかと訊かれたら正直微妙です。
作風としては9thの延長線上ながら6th、7thに近い、メロディアスでギターソロもあるモダンヘヴィロック。ギターありきではなく、シンセサイザーを使った空間的なエフェクトで雰囲気を作っているのも6thに近い。だがアメリカ進出当時に感じたチャラさや浮ついた感じはなく、決して過去の焼き回しではない。
今作で特徴的なのはそのメランコリックさとドラマチックさ。全体を通してどこか影のあるメロディが叙情的なヘヴィネスと合わさり、モダンな作風ながら意外にも3rdの頃を彷彿させるような勇壮で仰々しい泣きのドラマを表現している。
さらにアンダースのボーカルは間違いなく過去最高であり、コーラスラインの感情表現は是非2nd、3rd辺りで発揮してほしかった(笑)と思わずにはいられない素晴らしさ。
儚げなイントロから王道のヘヴィリフ、そして勇壮な泣きのコーラスラインへ…『1.Sounds of a Playground Fading』。
不穏なデジタルシンセが癖になる『6.Where The Dead Ships Dwell』
泣きのギターとヴァイオリンのツインリードが大仰なドラマを演出する『12.A New Dawn』。
上記の曲以外もメリハリがあって、同じような曲がないのもポイント。『13.Liberation』なんかは第一印象「これIN FLAMES?」と感じてしまうほど雰囲気が違う曲もある。
ちなみに邦版のボーナストラックは『2. Deliver Us』のインストVerのみであり、別にいらない(笑)ので、付随のポスターや邦訳いらない人は輸入版でいいと思います。
今作で表現されている悲哀さは、もしかしたらイエスパー不在という喪失感からか。初期の頃にあったような勇壮さが再び表れているのは、イエスパーがいなくても前に進んでいこうとするメンバーたちの意気込みか。聴き終えてからそんなことを思った。
他のレビューを見ての通り、評価が分かれる作品ではあると思うが、個人的にはイエスパー不在の中でも、あくまでバンドを前進させていこうとする姿勢が感じられて良かった。
願わくば、万全の状態でイエスパーが復帰し、IN FLAMESが完全復活する日が来ることを願うばかりである。
Sounds of a Playground Fading
こちら値段が高い方はDVD付きのデラックスエディション、デジパックになっています。
先にDVDの内容を言うなら、全曲についてのレコーディング風景とインタビュー映像が入っています。字幕も基本的にありませんし、若干内容的には乏しい。所々アンダースがWiiをやってたりしたのはちょっと面白かったですが、内容的にはあまりオススメのモノではありません。こちらの方はデジパックが好きな方だけ買えば良いと思います。
さて、楽曲の内容は前作から比べるなら遥かにレベルアップした作品。むしろ前作はヴォーカル自体がまだ甘かったのと、音のクオリティ自体が低かった点が引っかかっていました。ただ今回は楽曲の質を格段に押し上げてきた作品。ギターは駆けるし、インフレイムスらしいイエテボリサウンドを展開しています。
そしてそれに乗るヴォーカルも格段に良くなりました。もともとアンダースの声自体特徴的なモノがありましたが、最早デスヴォイスは欠片も使われていません。声域自体が狭く表現力不足と良く言われた彼のヴォーカルですが、全くそんなことはないです。確かに全盛期のデスが聴けなくなってしまったのは寂しくもありますが、新しいIn Flamesの完成形を一旦表すことに成功した作品だと思います。
個人的には疾走感とめちゃくちゃカッコいいサビが特徴的な#5、今までにないIn Flamesをアンダースの新しい声によって確立した感じのある#9、ストリングスが楽曲を纏める#12、そしてIn Flamesとしてはあり得ないほどのポップソングである#13など。新境地が詰まっています。
メタルファンだけでなくロックファン全般に聴いてもらいたい作品。
Colony: Reloaded
メロディックデスメタルバンドの代表格IN FLAMESが残した屈指の名盤。
Voアンダース・フリーデンが提唱した「ヴァースでスクリームして、コーラスでクリーンヴォイスを使う」っていうスタイルがこれでもかと使われている。
#1のイントロを聴けば古参のファンはもちろんのこと、メロディックメタルを中心とした哀愁系HMのファンはガッツポーズがでるでしょう^^
ちなみにデスヴォイスとは言っても、アンダースのそれはかなり細めであまり圧力は感じないんで聴きやすい方かと思います。
その他にも印象的なメロディやフックが満載で、曲ごとの区別が付きにくいデスメタルというジャンルにも関わらず各曲が光り輝いている^^
とここまではべた褒め。その反面僕は実の所アンダースのVoは高く評価してません。
というのもこの頃のIN FLAMESの魅力は何と言ってもGtのイエスパー・ストロムブラードが奏でるメロディだと思っているので、別にアンダースがすごいからこのアルバムが凄いとは思っていないんですよ。
特にこのアルバムでは普通声もかなりめだっていますから余計にね〜
しかし#7(EUROPEのキー・マルセロがゲスト参加した)におけるイントロの「ジェアッ!!」は彼のベストパフォーマンスと信じています^^
Do As Infinity “ETERNAL FLAME” ~10th Anniversary~ in Nippon Budokan [DVD]
あれから約4年、Do As Infinityは再び、約束の地に立った。
「多くの人がライブに求めるものは、
人間としての生々しさや、その後ろにかいま見える物語、
そしてその日そのときでしか聴くことの出来ない音と声だ。
想いを伝え再始動の鐘を高らかに打ち鳴らしたこの日のライブは、
その意味では100点満点かそれ以上だった。」(ライナー本文より抜粋)
約4年振りの日本武道館で魅せる最高のライブパフォーマンス、全36曲を完全収録。
ステージ中心に組み上げられた巨大な円柱上のLEDや炎などを効果的に使用した迫力のある舞台演出、
初の試みとなったシングルメドレーなど見所満載の作品に仕上がっている。特典映像には、
リハーサルから武道館本番まで完全密着したメイキング映像、
メンバーとステージプロデューサーによるオーディオコメンタリー(副音声)を収録。
炎の眠り (創元推理文庫 (547‐3))
戦慄のデビュー作『死者の書』で、読者を驚愕させたダーク・ファンタジーの名手 ジョナサン・キャロルの長編。ハイファンタジーではないのだけれど、普通小説の中に、幻想小説を混入させたような作品。
本書の前半は、主人公である脚本家兼俳優ウォーカーの日常。親友のニコラスや、2番目の妻となるマリスとの日々が綴られていく。ちょっとオシャレな映画を見ているような感覚だ。しばらくは、ウィーンの風物の中で繰り広げられるウォーカーと、チャーミングなマリスの恋物語を堪能する。
ストーリーが転換するのは、マリスがウォーカーにそっくりな肖像を墓場でみつけてから。その人物は30年前に父親に殺害されていたのだ。ウォーカーとマリスに不吉な影がしのびよる。ニコラスの突然の死や、ウォーカーの夢にあらわれる別の人生。白日夢のように現れる海龍。
後半からは、(剣はないけど)魔法の世界。ウォーカーのメンターとなるシャーマンの登場。その死。ウォーカーの生と死にまつわる謎とは何か ・・・
とつづく。
本書は、グリム童話ルンペルシュティルツヘンをモチーフにしている。個人的には、童話に題材をとる作品にはいささか食傷気味だったりするのだが、本書は別格。ハッピーエンドに一撃をくらわす最後の一文が秀逸だったりする。
全体としてとっちらかった感があるのだが、ダークファンタジーというものを堪能できる作品。