破裂
内部告発を発端とした医療ミス裁判。患者側に協力しながらも、医師の立場と患者の立場の間で揺れる麻酔科医江崎。告発されたエリート心臓外科医香村。
医療の力を利用して老人をぽっくり死なせ、国家の医療費を削減すべく、「天寿」なるプロジェクトを推進する厚労省キャリア佐久間。
両者を追い、スクープを狙うジャーナリスト松野。
それぞれの利害が交錯し、限界を超えた時、事件は起きた・・・!
それぞれの立場の登場人物に語らせる本音には現実味があります。特に医師と患者の間で揺れる江崎の心理描写がいいです。著者が医師なだけに真実味があります。
全体としては、医療裁判あり、厚労省の壮大なプロジェクト計画あり、と先はそうなるんだろう、と気になってどんどん読み進められるおもしろさがあります。
前作の「廃用身」より、重さがなくなり、ミステリーとしてのバランスが取れていると思います。
一読の価値は十分ある思います。
思い通りの死に方 (幻冬舎新書)
中村仁一先生は、5年ほど前(前作がヒット?する前)に講演会に参加して、そのお話に非常に感動しました。前作「大往生したけりゃ・・・」は、先生が常にお話されているエピソードをさらに介護や医療の現場から裏付ける内容で素晴らしかったですが、本作は在宅医療の医師である久坂部先生との対談形式で、さらに奥深い内容と感じました。
いまの日本の甘えた「健康長寿」神話と不要で残酷な延命措置に非常に疑問を感じています。
高齢者はもちろん、若い世代も「死ぬまでの生き方」を考えるために、一読する内容だと思います。
鋭い内容ながら、随所に声を出して笑える部分、思わず拍手したくなる部分、いろいろあります。
もちろん本書に反論する方もいると思います。
でも、まずはお二人の話に耳を傾け、自分なら?と考えてみることが大切かも。
その上での、さまざまな結論でしょうか。
お勧めです。