米国反トラスト法に関しては、ロースクールの学生や実務家を対象にしたケースレビュー満載のテキストは充実していますが、日本ではこれまで非常に限られたものでした。このテキストは第一線の教授陣が通説、有力説、少数説まできちんと視野に入れつつ、個別ケースにひとつひとつ言及し、いわば”王道的”なまとめかたで著述されています。厚さとしても適度にコンパクトですので、レファレンスとして重宝されるものと思います。
財閥は明治時代になってから形成されたものであるが、三井や住友のように江戸時代の富商から発展したものもあれば、明治になってから一代で財をなした渋沢栄一のような人物によって築かれたものもある。戦後GHQは、日本が世界大戦を起こした原因のひとつを財閥と見て、これの解体を進めるが、1949年に中国で共産党政権が樹立されたことに伴い、この動きは緩和され、財閥は再編復興して、戦後の高度成長を支えることになる。この再編は都市銀行を中心になされ、1960年代中盤には6つの企業集団(三井、住友、三菱、三和、芙蓉、第一)が出揃うことになる。高度成長が終わりを告げると、これらの企業集団に綻びも見られるようになるが、特にここ10年くらいでみずほFinancial Groupのような金融機関の合併再編も進み、ひとつの大きな時代が終わったということなのだろう。本書はこの期に日本の15大財閥(三菱、住友、三井、安田、浅野、大倉、渋沢、古河、2つの川崎、、三和、鴻池、野村、旧鈴木、日産・日立)をとりあげ、その栄枯盛衰について論じている。是非一読を薦めたい。
「ぬえ的」課徴金と刑事罰の併用という現行の制裁・措置の「構造上の歪み」を指摘し、ケースを具体的に引きながら、現職検事ならではの実務に裏打ちされた説得力ある論述を行っている。過去のケースレビューだけでも知的好奇心をくすぐり、興味深いものであるが、加えて、独禁法の起源にまで遡り、一般的な司法機関から切り離し、独禁法専門の特別の司法機関に法執行を行わせることを企図した「サルウィン構想」にも注意を払うとともに、米反トラスト法に関してWileyが指摘したのと同様、底流にある経済理論・経済政策の認識の推移にまで目を配った良書である。現在行われている独禁法改正論議を評価するうえでも、非常に役立つ視角を提供するものと思われる。
韓国の友人がおり、「アジアでの大国は中国は横に置いて、やはり日本というのは近隣諸国から魅力の国だ」というコメントをもらった。そこで、はたと気になってレビューしたくなり、当著書を購入した次第。気になったのは韓国人が過度に猜疑心が強いというあたりの記述は、今後、韓国系の方と接するときの参考になった。まあ、近代歴史が歴史だから仕方がないとは思ったけれど。。。感謝!
ビジネスのグローバル化が叫ばれる現在、アメリカの独占禁止法を知らないと痛い目にあいます。 しかしその概説書はないという現状の中ではかなり質が高いと思います。著者の持論である「法律条文では独禁法はわからない。ケーススタディをとことんやるしかない」という信念が貫かれていて、明快です。 しかし大陸法的な法学を学んだ人には抵抗があるかも。
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