21世紀ヘのチェルニー 訓練と楽しさと 山本美芽/著
~うちの娘(小学2年・ピアノ歴3年半)は、チェルニー30番練習曲を1番からきちんと順番にやり始めて、今21番を練習しています。はっきり言って、毎曲イヤイヤやっています。私(非音楽系)は何も知らず、そんなものなのか、と思っていました。でも、エチュードにはいろいろな考え方があり、正解は一つでない事が分かりました。多くのピアニストがチェル~~ニーを使っていない、または抜粋しかやらないし、あの上原彩子さんが全くチェルニーをやっていないのには驚きました。他の教本の効果的な使い方も載っています。練習をいやがるお子さんをお持ちの保護者の皆さん、家で楽しく練習させるためにも是非ご一読下さい。~
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番&ムソルグスキー:展覧会の絵
2002年の第12回チャイコフスキー国際コンクールで納得の優勝を飾り、『情熱大陸』出演で一気にその名を全国へ轟かせた上原彩子二枚目のアルバム、そして、協奏曲の正規初録音が、今回のチャイコフスキー〈ピアノ協奏曲第一番〉だ。併録はムソルグスキーの《展覧会の絵》、独奏ピアノによる。
本来、チャイコフスキーのこの曲は初演前に一悶着あった挿話でも知られるように高度な技術を必要とした。が、近頃は多少ばかりの腕に覚えあるピアニストは誰しも、それこそ猫も杓子も第一番へ手を出したがり、結果、感情もなにも伴わない愚演ができあがる。
だが、この上原盤は違う。彼女の独奏へ触れてわたくしは、この人こそこの曲を弾くために生まれてきた人だと確信した。こんな満足、抱いたことは久しくない。若々しくも恰幅豊かな、実に味わい深いチャイコフスキー。加えて、意外なまでにアヴァンギャルドな性格を持つ第一番の素顔を知らされたのである。しかし、無念はブルゴス=ロンドン響のサポートが部分的にもたつき気味で、興を削がれること若干あり、ということだ。
一方のムソルグスキーも彼女のピアニズムが縦横無尽に輪舞したもので、なによりも詩的なタッチと構築力の強さを堪能していただきたい。数多の競合盤と比較しても一頭地を抜く盤であること、ここに保証しよう。
以前勤めていたCDショップで前作のソロ・アルバムが発売された折、パレット用の大判コメントに〈上原彩子、見参!〉と墨跡あざやかに認めた覚えがある。さりながら、いささかそれは早計だったようだ。むしろ今回の協奏曲録音を以て斯く表すべきだったかもしれない。
音楽を聴く楽しみ、CDを買う楽しみ。そんな営みにまた一人、ひいきな音楽家の名前が加わったのを、まずは喜びたい。□