西洋絵画の巨匠DVD BOOK フェルメール/レンブラント/ブリューゲル/ルーベンス (宝島MOOK)
印象派も購入しました
たっぷりの内容です
価格もリーズ−ナブルです
ただ、絵画は全体像で見るもので
詳しく部分のアップの映像あっても
とくにです。
第3編はあるのでしょうか
英国式庭園殺人事件 【HDマスター】 ブルーレイ [Blu-ray]
'90年代は、わが国で最も映画の多様性が受け入れられた時代だったと思う。ミニシアターでアート系のヨーロッパ映画がたくさん上映された。ピーター・グリーナウェイも、そうした潮流の中で注目された監督だった。
本作『英国式庭園殺人事件』は、'82年に製作されたグリーナウェイの劇場長編第1作。
画家ネヴィル(アンソニー・ヒギンズ)は富豪ハーバート氏の夫人(ジャネット・スーズマン)に、夫の留守中に屋敷の絵を12枚描くよう依頼される。しかし、ネヴィルが仕事に取り掛かると、彼が描く景色の中にハーバート氏の死を暗示するものが次々と現れる。夫人の娘・タルマン夫人(アン=ルイーズ・ランバート)は父ハーバートの死をほのめかす。そして12枚の絵が完成した時、ハーバート氏の死体が屋敷の堀から発見される・・・。この館で、一体何が起こっているのか?
グリーナウェイ映画の最大の魅力は「アート性」。いや、「アート至上主義」といってもいいかもしれない。彼が多くの映画監督と一線を隔すのは、映画の中にアート性を追求する、というよりも、映画をアート表現の一手段として選択しているにすぎない、という点である。
そのグリーナウェイ流アートについて回るのが「死」のイメージ。画家の画材一式はすべて漆黒で、衣装は白と黒 ― 喪服のようである。劇中何度も登場する貴族の食卓は「キリストの最後の晩餐」を連想させる、長テーブルを横移動するカメラワークで統一されている。そして、シェイクスピア劇を、さらに様式化したような会話。人物のアップがほとんどなく、画面を絵画に見立てたかのような「構図至上主義」・・・。
グリーナウェイは、イギリス貴族の庭園や室内装飾に見る「人口楽園」趣味を、逆説的に「アンチ・パラダイス」または「デス・トピア」的不条理劇として描こうとしている。実は筆者の記憶では、この映画は庭園の強烈な緑色と、その映像にかぶさるマイケル・ナイマンの音楽が、なぜか強く印象に残っていたのだが、今回再見して、その印象は間違っていなかった事が判った。白・黒・緑、そしてそこに加わる黄色=南国(楽園)がこの映画のコンセプト・カラーだ。
グリーナウェイ映画で共同作業を行ってきた作曲家のマイケル・ナイマンは、やがてアート性がどんどん過剰になり、物語性が失われてゆくグリーナウェイ映画に危惧し、「MTVの小手先だけの表現が持つ危険性」を指摘するようになるが、本作はグリーナウェイ初期の作品で、物語性もあり、多くの映画ファンに受け入れられた作品である。ミステリーというよりは不条理劇、ではあるが。
彫像に見立てられた黒塗りの庭師が、動き出す ― そしてトロピカル・フルーツ(パイナップル)にかぶりつく。このラストシーンは、まさにグリーナウェイ流図像学=徹底した視覚(アート)主義による貴族社会(人口楽園)への痛烈な皮肉と風刺、の映像表現なのだ。