奥州藤原氏四代 (人物叢書)
藤原氏に興味を覚えて数年。もちろん専門知識はない自分のレビュー。
本書では4代の概要、時代背景がうまく整理されて記述されている。蝦夷や源家と藤原氏との経緯について基本的な知識があれば楽しく読み進めることができると思う。
他の書籍には基衡の記述がほとんど全くないが、これらを補間できる。
しかし驚いたのはこれが50年近く前に発行されていたということ。現在までにどれほど知見が増えたのだろうか。そのくらい、藤原氏には謎が多いと気付いた。
高橋崇氏の新書と合わせて読めば藤原氏の理解の助けになると思う。
しみじみと平泉を訪れたくなる想いにかられる。
逆説の日本史〈5〉中世動乱編 (小学館文庫)
「逆説の日本史」シリーズ第5巻の当作品は、鎌倉幕府成立の謎に迫ります。源頼朝が、いかに当時の武士階級が持っていた、朝廷のとくに土地政策に対する不満を汲み取り、権力を奪取するのに成功したかが分析されています。その後北条氏に政権は引き継がれていくわけですが、その辺りの流れが明快な論理で解説されています。源氏に奇跡の勝利をもたらしたものの大局を見ることができず、追われる身となった源義経にも考察を加えています。
鎌倉時代当時のことが、生き生きと伝わってくるだけでなく、現代日本のものの有り様に付いても新しい視点を提供してくれるこの本は、全ての人にお勧めできます。過去と現在を橋渡しすることにより、我々が住む現代を相対化して見ることを可能にする素晴らしい本です
楊令伝 10 坡陀の章
前巻では童貫戦に決着がつき、大きな山場を越えた。
金は開封府を落としたが、統治という点で悩み傀儡をたてるも失敗。
青連寺は南京応天府で帝の血縁を擁立して、南宋の設立を進める。
梁山泊は国土を広げることなく、西夏、日本との交易からの収入を得ることで、
民の税を抑え、民のための国の設立を目指す。
子午山経由の第二世代、最後の大物の秦容もついに旅立つ。
公孫勝と向かった先は西夏。
ちなみに岳飛は、今回いいとこなし。
兵糧は奪われるし、楊令の次の主人公となるべく勉強中か。
大きな展開はないが、今後の展開の複線となりそうな巻である。
中尊寺千二百年の真実―義経、芭蕉、賢治…彼らを引き寄せた理由 (祥伝社黄金文庫)
世界遺産にも指定されそうな平泉の象徴「中尊寺」。
開闢から現在までの歴史、謎について、興味深く分析されています。
三代のミイラの秘密。四代泰衡の首級がなぜ、金色堂にあるか。
明治時代の大修理の際のエピソードなど、現在との文化遺産に対する考え方の変化
が伺えます。
NHK大河ドラマ 炎立つ 完全版 第壱集 [DVD]
皆さんのレビューを拝見しましたが、「第3部・黄金楽土」の評価がイマイチなので、
ついつい書かせてもらいます。
確かに、躍動感、ハラハラ感などは1〜2部とくらべると少なくなったのは否めません。
だけど、派手さだけが大河ドラマではないはず!!!
原作が間に合わなかったこと、仮に原作が間に合っても、あれでは映像化がむずかしかったのでは?
と思わずにはいられません。
読んだ方ならわかると思いますが「日本中央」の碑などのくだりはちょっとね〜。
泰衡の叔父、基顕の出家後、泰衡は叔父・基顕を束稲山(たばしねやま)の庵に何度かたずねる
シーンがあるのです。
平家滅亡後、源氏対平泉の色が濃厚になると泰衡は阿津賀志山(現・福島県)に防塁を築きます。
それを叔父・基顕が
「戦のために使うものを民衆に築かせ、そしていざ戦になればその民衆を戦いに巻き込む事になる・・・。」
と、嘆く。
「守ることさえできないのか?」と問う泰衡に、「守ろうとする心が戦を呼び寄せる」とたしなめる。
そして父・秀衡と祖父・元成が袂をわかち、いよいよ平泉の分裂が迫り、再び基顕を訪ねる泰衡。
泰衡は「今は平泉が血にまみれている。・・・血を流さないと平泉は守れないのか?
ここ(庵)から見ると、どう見えますか?」とたずねると、
基顕は「ここからみると輝いている平泉、その輝きを守るという思いも「欲」なのでは???」と。
そこで泰衡は「平泉を捨てればよいのか?」と問うと、
基顕は「そなた(泰衡)が無になったほうが民衆のためかもしれない」と。
泰衡「わたしが無に・・・???」
じっさい、統治者が逃亡すると統治されていた民衆が被害を蒙ったことはあまりない。
むしろ統治者が民衆を使って敵対する勢力と戦うことがあることを思うと・・・