石川淳短篇小説選―石川淳コレクション (ちくま文庫)
巨匠石川淳の、戦中から戦後の約三十年に書かれた短篇たち。
さすがの石川淳も、最初の頃はけっこう書きにくい体験もしていたんだなあと、「マルスの歌」では読みとれます。
「影ふたつ」「灰色のマント」「まぼろし車」などでは、観念的な幻想が使われて、ちょっと生硬な感じがして残念とも言えます。
ただ、歴史の枠を応用した「喜寿童女」「金鶏」「ゆう女始末」などは流石です。素晴らしい出来栄え。
なんとなくナボコフ的なところがあるように、つまりどこか形而上なところが含まれているようにも思えます。
副島蒼海が、石川九楊の言うとおり能書として書かれたり。
最後の短篇では、著者自身批判した文化大革命もちょっと書かれています。