いくら観てもよく分からない映画ではあるが、何となく恋愛というのはそういうものかという感想も持った。昨今はメリット・デメリットをうるさく言うことも多い男女関係だと思うが、そういう中でもなんとも言えない不思議な展開というのが恋愛というものにはあるのだと何となく思う。30年近く前に名画座で観たが、こういう不思議な作品を現代の日本を舞台にして誰か撮ってもらいたいものだ。現代のパリを舞台にしたくだらない映画よりもずっと世界でヒットすると思うが。
かつてこれほどまでに美しく、かつショッキングな映像体験があったでしょうか。物語性はありません。しかし怪物のように不気味にそびえる館と生気が抜けた彼岸のように横たわる庭園をめぐりめぐっていくうち、物語の中心人物たる男女の関係はおろか人間の意識の曖昧さがあからさまに露呈していくさまは圧巻。
登場人物の立ち位置から動きまでが完璧に計算しつくされた画面構成は見事というほかはありません。また背景、借景の使い方といったら、かつて見たことの無いモノクロ映像究極の様相を呈しているといっても差し支えないほど鮮烈で優美。難解すぎるプロットからしてもアラン・レネ監督が商業用フィルムをまったく意識しなかったことが伝わってきて、そこがまた痛快。
たとえ難解であっても映像芸術としてはパーフェクトに近い、これは人間思考の複雑な独自性と際立つ映像美に酔いしれるヨーロッパ映画の逸品。
購入するまでは少々心配でしたが、本商品には満足致しました。
撮影用にわざわざ作った屋敷セットをフルに利用した細かい照明効果が鮮明になった画像で良く解かります(特に品の良いマダムと腹黒いギネスへの対照的な照明の当て方)。
特典も嬉しく、特に40分を超えるドキュメンタリー「フォーエバー・イーリング」はこの伝統あるスタジオの歴史を創設期から現代に至るまで取り上げており、コメディのイメージが強い本スタジオでは『DEAD OF NIGHT(夢の中の恐怖)』の様なホラー・オムニバスや『南極のスコット』の様な伝記映画も作られていた事が知れて幸甚でした。
特に作中触りを観れる『DEAD OF〜』の腹話術人形編は実に恐ろしげで是非とも全部観たくなりました。
ナレーションをダニエル・デイ・ルイスが務めるのを初め、コメンテーターもサー・ジョン・ミルズ、リチャード・アッテンボロー、ジョン・ランディス、マーティン・スコセッシ、イントロダクションも担当したテリー・ギリアム等豪華でした。
外装は手触りの良いエンボス加工ですが、開くと紙媒体はblu-rayディスクに関する説明書のみで、ディスク本体内に豪華な特典が有る物の少々殺風景な気が致します。
それでも本編では役者・美術・照明・撮影等の職人芸が堪能出来、かつ貴重な英国映画の歴史も学べる素晴らしいディスクです。
お薦め致します。
国内盤と同仕様と思われる、日本語字幕を収録した
英Optimum社より発売中のUK StudioCanal Collection盤のレビューです。
国内盤の発売前ですが参考になると思うので掲載します。
・本編について
片面2層ディスク。
本編はMPEG-4 AVCコーデックの1080p HD画質、画面サイズ2.35:1で収録。
コントラスト、グレインともに適度なレベルに仕上がっており、
多少のキズや歪みは見られるものの、かなりの高画質といっていいと思います。
音声も良好です(オリジナルのフランス語およびドイツ語の吹替が
DTS-HD Master Audio 2.0chで収録されています)。
なお、米Criterion社から発売されているUS盤(私は所有していませんが)
はフランス語音声をリニアPCM 1.0chで収録しています。
・字幕について
日本語字幕はユニバーサル=StudioCanalのソフトにしては
かなり良い出来だと思います。
2人分のセリフが同時に表示されることも、漢字が多用されることもありません。
翻訳も良好で、不自然な部分はありません(翻訳者クレジットなし)。
しかしながら、冒頭の(同じフレーズを繰り返す)ナレーションの
繰り返し部分が表示されていなかったり(この部分は英語字幕で確認できます)と、
やや疑問もあります。
私は紀伊国屋書店より発売のDVD盤を観ていませんが、
日本語字幕については細川晋翻訳の字幕を収録したDVD盤の方が
より信頼できるかもしれません。
日本語以外に英語やドイツ語、オランダ語、デンマーク語、ノルウェー語、
フィンランド語、スウェーデン語の字幕を収録する多言語仕様。
・特典について
「ジネット・ヴァンサンドーによるイントロダクション」(SD・19分・日本語字幕付き)
…映画評論家のG.ヴァンサンドーが、本作の歴史的意義や内容の様々な解釈、
公開当時の観客への受け入れられ方を解説する、必見の特典。
US Criterion Collection盤にも同様の特典が新録で収録されているようです。
「短編1:『スティレンの唄』(1958年)」(HD・14分・日本語字幕付き)
「短編2:『世界のすべての記憶』(1956年)」(HD・23分・日本語字幕付き)
…ポリスチレン製品生産の過程と、パリの国立図書館を取材した、
アラン・レネ監督による短編ドキュメンタリー映画を美しいHD画質で収録。いずれも
従来日本ではDVD『アラン・レネ/ジャン=リュック・ゴダール短編集』(紀伊国屋書店)
でしか観ることができなかった貴重な作品です。
監督の美的感覚がうかがえる芸術的な作品に仕上がっています。必見です。
US Criterion Collection盤にも同じ映像が収録されています。
「ドキュメンタリー:『マリエンバートの迷路のなかで』」(SD・34分・日本語字幕付き)
…映画製作に至る過程や作品の解釈を巡る、見応えあるドキュメンタリー。
US Criterion Collection盤には未収録。
「ドキュメンタリー:『アラン・ロブ=グリエ』」(SD・49分・日本語字幕付き)
…本作の脚本を手掛けた作家のアラン・ロブ=グリエを取材したドキュメンタリー。
内容は『マリエンバート』とはあまり関係ないです。
US Criterion Collection盤には未収録。
「予告編」(SD・4分・英語字幕付き/日本語字幕なし)
欲を言えばUS Criterion Collection盤に収録されているメイキング・ドキュメンタリーや
監督インタビューのような映画制作の舞台裏に迫る特典も収録してほしかったところですが、
映画の内容の理解が深まる特典が収録されているのはうれしいものです。
・総評
現在手に入るDVDよりも綺麗な映像と貴重な特典が入っていながら
DVD盤(定価5040円)よりも安価であり、字幕も悪くないので、
日本語で本作を観るなら、このブルーレイは間違いなくオススメできます。
ただ、日本語字幕がなくてもよいならば、アラン・レネ監修の
US Criterion Collection盤の方がベターかもしれません。
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