鈴木祥子
この人のアルバムはセルフプロデュースの作品の方が好きです。この破格の音楽性の広さ、完成度の高さはもちろんなのですが、何よりも鈴木祥子自身を頑なに発信し続けていて、畏怖の念すら感じます。それにしても、ROVOがバックを演奏している曲では淫靡な雰囲気の中に崇高さすら感じます。星の評価なんて必要ないかな?星五つに決まってますから。この人ほど切実に自分自身を表現している人は他にいないと思う。そこには鈴木祥子の持つ様々な矛盾やエゴが隠されることなく表現されている。真のアーティストとはこうゆう人のコトのことをいうのだろう。
GOLDEN☆BEST 鈴木祥子~The Ballad of Syoko Suzuki
ソングライターとしての力量、声の響きの素晴らしさなど鈴木祥子氏の魅力は他のレビュー参照。活動初期に関してはCDの音質や活動環境について、思うようにならなかった苛立ちを本人も折に触れて吐露されている。私はその頃の作品を聞くと、「もっと良い作品になっていたのかなあ」と作品そのままに向き合えない時もある。その点、本ベストCDは音質的にはリマスタリングによって安心して聞けるようになっているのが魅力だ。
詳細に及びディスコグラフィーなど丁寧なつくりもうかがえるのに、残念なのはライナーノーツ。「その人が愛する「音楽」もまたかけがえのないひとつのキーパーソンである」「「孤独」という言葉がとても市民権を持っている」2箇所のみ引用するが、気になる表現は他にも多数。劇作家を名乗る人がこんな日本語を使うのもどうかと思うが、校正は担当者の仕事。新潮社の編集者レベルの仕事しろとは言わない。作家の原稿にケチつけにくいのもわかる。なにより、締め切りがあったんであろう。でも、結局書き手に恥をかかせることになるよ。内容も、どういう読み手を想定して、どういう目的を果たしたいのか、あいまいに書いたのがありあり。十人並みの印象論をだらだら書かれても困る。こんなことになったのも、原稿依頼の仕方が悪いんだろうと想像する。
ま、ライナーノーツは読まなければいいだけの話で、本CDにとっては小さな瑕疵でしかない。ballad編に続いてuptempo編を期待させてしまう力を持つ好編集盤です。
I don’t play no instruments/I wanna play my instruments [DVD]
とても良かったです。歌唱が、ぶれない。なんといいますか、この曲はこう歌うしかなかったんじゃないかなぁと各々の曲を聞いていると思わせられます。血を流しながら歌ってるんじゃないかと思うくらいその人にしか見せられない芸術を見た気分。これ褒めすぎか?
その人にしか見せられないもの、自分の中にある、これしかないもの、それを取り出し、多くの人が感情移入出来る様に表現する、そんな態度。そういうものを見せる人なんだなぁと思いました。
SYOKO SUZUKI Song Book I 鈴木祥子作品集 Vol.1 (1989-2009)
好きなアーティストが他アーティストに提供した曲を聞きたいと思っても、それのアルバムを探したり、1曲だけのためにアルバムを買ったりという行為は結構大変なものです。そんな問題を解決してくれるファン向けのアルバムだと思います。何枚もベストを同じ曲で組み替えているいやらしいものとは格が違います。
おまけにDisk2にはご本人のセルフカヴァーが付いていると祥子嬢はなんとも気前が良いのでしょうか。
ラストの『Life』はあまりにも痛くてせつなくて川村カオリVersionもセルフカヴァーVersionも良いです。
良いアーティストですね鈴木祥子。
無言歌 [DVD]
アイドルとしてデビュー後、メジャーなヒットがないのに20年以上も活動を続けている稀有なアーティスト「鈴木祥子」。
このDVDは、彼女の創作活動の舞台裏をドキュメンタリータッチで記録したものである。
昔「自分探し」という言葉が流行ったことがある。当時は「今の自分は本当の自分ではない。どこに行けば本当の自分に出会えるのか」と言いながら旅に出たりする若者がいたものである。
このDVDで鈴木祥子がやっていることも「自分探し」かも知れない。違いは「今の自分は本当の自分である。自分の起源はどこにあるのだろうか」ということである。
ミュージシャンの創作活動をドキュメンタリーにしたものは色々あるが、内容的にはかなり「よそ行き」の姿である。一方このDVDは「こんなにスッピンで良いの?」と言いたくなる。アーティストのドキュメンタリーとしてはかなり希少価値があると思う。