The Art of Loving (P.S.)
この本の原書のタイトルを直訳すると、「愛の技術」。フロムは、愛が、たとえばパン作りのように、鍛錬によって身に付けるべき技術である、と説く。だから、他の技術と同様、理論が存在するし、継続的な努力と鍛錬が必要だし、逆に正しい理論に基づいて正しく継続的に鍛錬を積めば身に付けられるものだ、とする。
鈴木大拙とも親交のあったフロムは、現代人が愛する技術を鍛えるために真っ先にやることとして、「一人でじっとしていられること」を挙げているのが興味深い。
「愛することのできる対象」を追い求めてばかりいてはだめで、自分が「愛するに足る成熟した人間かどうか」を考えなければならないんですね。目が開かれる思いです。現代社会を生きる人すべてにお勧め。
IL VENTO E LE ROSE ~愛するということ~ [DVD]
恭子さんの休暇物語でした。
セックスシーンは、普通に思えました。
静かなので眠くなりますが、
恭子さま信者のかたにはオススメです。
人が人を愛することのどうしようもなさ [DVD]
私たちは映画を観たとき、物象を自らの意思で目撃したと思いがちです。
けれど、ほとんどの場合“見せられた”に過ぎません。巧みな編集やCGを駆使出来る
時代に女優喜多嶋舞と監督石井隆がわたしたちに“見せた”ものは何だったのか、
そこを充分に考えないと『人が人を愛することのどうしようもなさ』を“見た”
ことにはならないと感じています。
かれこれ二十年程前、カメオ工房に立ち寄った際に刻まれた強烈な記憶が蘇えります。
それは年老いた職人の著しく変形した指です。何十年と鉄製のノミ“ブリーノ”を振るい
続けた結果、男の人差し指は通常の二倍に膨れ、硬い皮に包まれていました。許しを請い
触らせてもらったその指は皮膚の弾力、温かさを失い、別種の生物が貼り付いたようでした。
凄いね、思わず声を上げると老職人は目を細めて笑顔をこちらに向けました。
ひとの肉体は変わっていくものです。労働にいそしむ男の腕には血管が浮き出て変形します。
子供を産んだ女性は相応のふくよかな体型になります。労働と長い人生を経て、人は変化
するのが自然であり美しいとわたしは思います。
喜多嶋舞さんの身体は美しかったですよ。その美しさを、その人生の重さと匂いを女優と
監督は表現したかったに違いありません。
描かれたのはカミーユ・クローデルの彫刻に例えれば、「分別盛りL'Age mur」を引き裂き
無残に孤立させた「嘆願する女 L’Implorante」の像です。性愛の女神として複数の男たち
に次々言い寄られる名美でなく、愛が消えることのどうしようもなさに身悶えして、淋しさに
狂った名美、ひとりきりのおんなの姿が描かれています。胸に迫るものがありましたが、
これに気付き共振するには相応の年齢を経なければ難しいでしょう。
大人の映画ですよ、これ。
人間の土地 (新潮文庫)
宗教や哲学が追い求める「生の意味」のひとつの回答がここにはある。
生命にはそれ自身が持つ、本然(本能、役割、使命、幸福、解放、本質的な欲求、平和)を認識し、死を賭してそれを追求することが求められている。そこには強い欲求、飢えが伴う。本然への欲求がない生命は、未だ眠っているのだ。
本然を満たしてくれるものは、人間それぞれで異なる。それは言わば未知の条件である。これは各人が苦労して人生を知らなくてはならないようだ。大抵の場合幼いころに誰もが、<運命=熱情>に出会うという。ただそれに気づいて活かすかどうかはその人次第なのだ。
ガゼルは気楽で安全な人間の柵からの脱出を試みる。一見リスキーでバカらしく思えるが、ガゼルにとっては自然の中を走り回り、踊ることが彼の本然であり、生の目的である。それによって彼の生(死)は完成するのだ。たとえライオンに食われることになってもそれは本望である。むしろ価値のある生を全うできたと誇りを持って死ねる。
本然のためなら生命はその命を捨てられる。あらゆる冒険は世界を再認識するために必要な作業なのだ。生命、人間を繋ぐたったひとつの目的のために生は存在する。争いは馬鹿げている。個々人の本然の追求が重要なのだ。人類としては同じ方向性なのだから、違いを認めるべきなのだ。
しかし著者は失望する。現実の世界は金属打ち抜き機によってみな同じ型にされてしまっているから。可能性が潰されているのだ。一人ひとりが可哀そうであると同時に、全人類、全生命の損失なのだ。これを著者は「モーツァルトの虐殺」という。
完成された人間は、精神の風が土地の上を吹いた時に生まれる。同一であることの方がリスクだ。オリジナルであれ。本然を全うすれば人間ははじめて人間らしくなる。高貴であれる。フランスらしい<ノブレス=オブリージュ>の精神が息づいている。
著者の本然は空を飛ぶことだった。人生の最後まで飛行機に乗り続けた。なるほどサン=テグジュペリの生き(死に)様は素晴らしい。
愛するということ (幻冬舎文庫)
出会いから別れまで失恋を解消できずに引きずってしまう女性の心の内が詳細に描かれていて圧巻させられました。
男によって傷つけられ男によって癒されていく女性の成長目録のような物語です。
失恋は立ち直ることではなく悟るということを本書を通して学べるのではないでしょうか。