夢の化石 今敏全短篇 (KCデラックス)
今敏の作品はOPUSしか読んでいなかったので、イマイチどういうジャンルの漫画を書く人なのかよく分からなかった。
この短編集には実に様々な種類のジャンルの作品が収録されている。
幽霊の出てくるちょっとホラーな話、戦国時代のシリアスな戦の話、かと思えばちゅどーんなんて擬音が出て来るドタバタ。心温まるサンタの話。ミステリー、SF…
大友さんの影響を受けたんだろうとすぐ分かる作品もあって、若者の社会に対する反発や葛藤が描かれている。
絵柄について。OPUSの絵柄はすんなり馴染めたのに、何となくこの本では抵抗感があった。1985〜90年にかけての作品集なので、確かに絵柄が古いは古い。しかし三分の一を過ぎたら全く違和感なく読めるようになったし、二回目に読み返すとむしろ味があると思えるタッチだ。
背景などのデッサン力はさすが、初期とは思えない安定感がある。
巻末には平沢進へのインタビューが4ページ載っている。
良い買い物をしたと思うが、OPUSと比べ、同じ作者の作品として厳しく見る意味で星4つ。
一番好きな作品は「JOYFUL BELL」
今 敏アニメ全仕事
全仕事ではなく全作品って感じ?
仕事って言われると、実際の製作風景などを想像してしまうので…。
劇場パンフ寄せ集めみたいだなぁと思いました。
(実際の劇場パンフではありません)
他の方が言うようにKON’S ARTは1ページにまとめないで欲しかった。
というより、イラスト集みたいなのを作って欲しいなぁ。
パプリカ オリジナルサウンドトラック
このCDのPLAYボタンを一度押したら、凄い数の音が怒涛のごとく頭の中に入り込んでくる。
その音たちが光を生み、風を起こし雨を降らせ、闇を作り夢を見させ、聴く者を瞬時にして違う場所や時空までをも超えさせる!
今敏(こんさとし)監督の映画音楽を平沢進(ひらさわすすむ)氏が担当するのは、
アニメ映画『千年女優』、TVアニメ『妄想代理人』に続き3作品目。
上の2作品共に平沢氏が作り出す曲が相乗効果を果たし、作品の雰囲気や世界観を大いに盛り上げていたと思いますが
今回は(映画は未見なのですが)それ以上の効果が期待できる、
単なるサウンドトラックの枠に収まりきらない聴き応えのあるダイナミックなアルバムになっています。
そして聴いたら間違いなく映画を観たくなる1枚。
残念ながら劇中の平沢氏が手がけた音楽を完全収録とはなっていないようなので、この★の数です。
映画のサントラというと、やはり映画の添え物的な音楽が多く、また遠慮気味のサウンドが多いのだが、
このアルバムにはそんな事を全く気にしていないような「やりたい音楽を作ったもんね」感いっぱいの独特な曲が多い。
コンピューターで作られたデジタル音が多用された曲は下手すると無機質な冷たい音楽になりがちだけど、
この人の生み出す音楽は不思議と暖かくて安らぐ。そしてなんだか懐かしい。
そしてヴォーカル曲2曲(平沢ソロアルバム「白虎野」から映画用にリアレンジして収録)がまた不思議。
平沢氏の幾重にも重ねられたヴォーカルは揺らいでいて歌詞がイマイチ聴き取り辛いのだが、
聴いているうちに、その中の1フレーズが突然に聴こえて理解できたりする。
聴くたびにそのフレーズの箇所も違うのだけど、これは計算か!?計算なんだろうなぁ〜。
この曲たちが、映画ではどういう絵に乗って流れてくるか凄く楽しみです。
ぜひ、大音量で聴いて下さい。
パプリカ [DVD]
本作(予備知識無し)→筒井さん原作→本作(日本語字幕なし)→本作(日本語字幕つき)という順で観ました。
どの段階でも楽しめました。
平沢さんの音楽と映像・演出のマッチングに引き込まれ、
登場人物それぞれの詳細が気になり原作を読みましたが、
原作からの置き換えというか、オイディプスとスフィンクスのところなど、
短い時間で映像化しまとめるのに上手い選択をなさったなと感じました。
原作で感じた小山内の人間らしさを感じられた場面でもあり、非常に印象的です。
R指定すればもっと際どい表現も出来たとは思いますが、
そうせずとも抽象的な映像表現で十分にそれは再現(あるいは増幅)
出来てたと思いますし、それこそがエンターテイメントだと思いました。
夢にネットを加えたことも、仮想現実も現実なのだと感じるのに効果があったと思います。
ラジオ・クラブに入ってパプリカに会う前後の目線と視野の変化などもリアルでした。
会話運びで自然に理解出来る関係性も端的で、作品のテンポを崩してなく良かったです。
粉川(と能勢)の魅力と小山内の哀れさという点は
原作を読んだ後だと物足りなく感じましたが、
非常にコンパクトにまとめられてて楽しめました。
我侭を言うと悲壮的な侍姿の小山内を映像で観たかったですけど、
それを今回の作風に取り込むのは無理がある気もするので自重します。
映画も小説も大衆娯楽、ということが再認識出来る良い作品だと思います。
変弦自在
・平沢だから何でも良いんだ
・名曲なんだから文句言うな
確かに、ファンなら、
絶賛するのも無理は無いです。
でも自分としては、
音楽は解説ではなく、音を楽しむものだし、
小難しい解説は、
無理やり好きになろうとしてる気がして、
正直、不要だと思います。
それよりも、問題は、
このアルバムのコストとボリュームだと思います。
要するに、不満は、
曲の出来ではなく、曲数の少なさ。
そもそも初期のソロアルバムでも、
1枚のアルバムの曲数は10曲程度だったし、
あきらかにコストパフォ−マンスが問題でしょう。
そのせいで、後半の見せ場である、
長尺の『トビラ島(パラネシアン・サークル)』に行くまで、
気持ちが高まらずにフェードアウトするような印象。
その次は、もう、ラストの曲。
『環太平洋擬装網』はエピローグ的に終わり、
なんだか消化不良のまま終わってしまう。
※ちなみにアマゾンに記載された曲順は間違いです。
特に今回は、『MOTHER』『金星』を、
平沢さんが珍しく気持ちよく歌っている気がしたので、
そのバイタリティーでもって、
後4〜5曲程度聴きたいところ。
本当に惜しいアルバムだと思います。