フィレンツェ (講談社学術文庫)
著者若桑氏の真摯な姿勢によって書き下ろされた本書は、フィレンツェの溢れるほどの歴史的な芸術遺産を丁寧に紹介したガイド・ブックの側面を持っていると同時に、ルネサンスを生み出した新思想の母胎としての都市の歴史をまとめあげた労作として高く評価できる作品だ。体裁を美しく仕上げることより、むしろ内容に力が注がれている教養書なので、豊富なカラー写真やイラストで彩られたイメージ主体のガイドとは全く別物であることを知っておく必要があるだろう。掲載されている写真は単行本の時から口絵以外は白黒でサイズも小さいものだったが、それはあくまで実際に実物を見るための目安に過ぎない。しかし今回の文庫本化で携帯の便宜が図られ、フィレンツェの見所がより身近に、しかも詳細に体験できるようになったことを歓迎したい。
彼女が美術の専門家であることから、ここで採り上げて説明している絵画、彫刻、建築物などは非常に豊富で、また比較対象のためにも数多くのサンプルを提供している。若桑氏の文章はそれほど平易ではなく、読む側にもある程度の予備知識が求められるが、随所に特有の鋭い洞察があって美術史家としての主張に貫かれているところが最大の面白みで、特に第9章『ウッフィーツィを歩きながら』は、この著書を総括する彼女の研究の面目躍如たる章になっている。通り一遍の観光旅行から一歩踏み込んだルネサンスの美術巡りをしたい方には本書と中公文庫から出版されている高階秀璽氏の『フィレンツェ』の併読をお勧めしたい。
とっておきのフィレンツェ/トスカーナ: おいしいものと素敵なところ
見開きごとの素朴な写真、そしてフィレンツェにいるような気分にさせてくれる心温まるほっとする文章。
フィレンツェの街や人の温かさ、雄大な自然にふれ、ゆったりとしたほのぼの気分になれる一冊です。
A12 地球の歩き方 フィレンツェとトスカーナ 2012~
この夏のイタリア旅行に備えて『地球の歩き方 イタリア』を熟読したのですが、フィレンツェのパラティーナ美術館の詳しい情報が必要だったので、本書も求めましたが、正解でした。
108ページ以降にピッティ宮殿の解説と建物内部の図解があり、110ページから6ページにわたって素晴らしい絵画群が紹介してあります。イタリア1のラファエロ・コレクションを誇るパラティーナ美術館です。ルネッサンス肖像画として有名なラファエロの優雅な作品を堪能しました。
『地球の歩き方』の良さは、欄外に挙げられた読者の投稿でしょうか。ピッティ宮の見どころだけでなく、廻り方やアドバイスも旅のお役に立つことでしょう。
フィレンツェのウッフィツィ美術館は、確かに世界有数の珠玉のコレクションを有しており、質の高さと掲載美術品の多さに驚きました。
57ページから11ページの分量で同美術館の名品を紹介してありますが、これだけのページ数を費やしているガイドブックはそうありません。
限られた旅の時間を有効活用するためにも、代表作が掲げられている部屋の情報は欠かせません。
地図も豊富で、地区別に8ページの分量でフィレンツェの街を紹介してありますので、街歩きには最適でした。タクシーも2回ほど使用しましたが、比較的狭い街なので、歩いて廻るための詳しい地図は欠かせません。リストランテや美味しいジェラートのお店、革製品などのショップの情報も的確でした。果物や野菜不足になりがちですので、食料品スーパーの紹介も役立ちました。
トスカーナ地方にはピサ、シエナ、サン・ジミニャーノといった古い町もありますので、もう少し長く滞在する人には本書は欠かせないでしょう。
ウンブリアのアッシジ、ペルージャ、マルケのアンコーナ、ウルビーノなど訪れて見たい街の情報も詳しく、『地球の歩き方』の情報量の豊かさにビックリしています。
巻末の「旅の準備と技術」の項目は、役立つ情報が満載ですので、必読ページとして挙げられます。
なお、本サイトに内容の項目が詳細に掲載してありますので、それも参考にしてください。