あらえびす SP名曲決定盤 第1集
ご存じの方も多いでしょうが、銭形平次の原作者である野村胡堂氏のSPレコードコレクションからの復刻です。歴史資料としての価値はもちろんのこと、蓄音機の時代にこれほどまで水準の高い音楽が享受されていたという音楽性そのものに感動します。胡堂氏は当時のレコード音楽の第一人者であり、東京大学でレコード音楽を講義し、現在の天皇陛下が皇太子であられたときに西洋音楽の御進講も務めた人物です。できれば音の良いスピーカーで再現したいデリケートな音源であります。
野村胡堂伝奇幻想小説集成
戦後になって幾つかの雑誌に発表された「奇談クラブ」を全話収録し、更に埋もれていた中短編を幾つか収録したもの。但し、戦後の「奇談クラブ」は「宝石」がスタートであった為か殆どがミステリーかサスペンスの類で、戦前のシリーズの様な幻想性は見られず小ぢんまりと纏まったものが多く、全体としてスケールダウンしてしまった感じで、第一シリーズと第二シリーズに見られた荒唐無稽な面白味に欠け、短いものが多いせいか筋立ての起伏もあまり無く単調な感じだ。
その他に収録されている単発ものの時代伝奇小説は、編者の方針からエログロ要素のある作品中心に選ばれている。
この調子で、SFをはじめとした埋もれた作品をどんどん発掘紹介して行って欲しい。
銭形平次捕物控〈1〉平次屠蘇機嫌 (嶋中文庫)
銭形平次というと時代劇を思いおこされる方が殆どだろう。
しかしこの小説、分類するなら時代小説というより『探偵小説』である。
自他とも認める時代小説好きの私だが、テレビのイメージが先行しているこの小説は理由もなく敬遠していた。
たまたま読む本がなくて手を出してみたのだが、なかなかヒット!
文体は少々古めかしい感じだが、私にはかえって新鮮だった。
時代劇ファンには申し訳ないが投げ銭の場面は殆どない。
むしろ平次の冴えた知性と推理を堪能していただきたいと思う。
平次とガラッ八の掛け合いもなかなか味があるので是非注目されたい。