ポップ中毒者の手記 約10年分
正直期待はずれでした。
これは、一概に著者である川勝氏に問題があるとは言えない気がします。内容の関連性が、当時の時代性と密接に結びついているため、今、初めて読む読者にとってはどうしても理解しづらいものであると思います。
著作の構成、内容においてではなく、今現在において販売されるような時代を超えて読まれるような書籍ではないのでは?とは思えてしまいました。
その年代に興味を持っている
異なる年代の方には理解しづらいものかもしれません。
ポップ中毒者の手記(約10年分) (河出文庫)
故・川勝正幸氏による96年に発表されたエッセイ/コラム集の文庫版。
文庫化にあたり、小泉今日子さんによる川勝さん回想記が追加されています。
私は当時ピカピカの幼稚園児だったのでBOREDOMSや渋谷系は完全に後追いなのですが、この本を読むことで90年代を追体験できたような気がします(勿論、この本で言及されているのはほんの一部なのでしょうけれど)。
・スチャダラ、かせきさいだぁなどの日本語ラップ黎明期秘話
・近田春夫への日本語ロック/ヒップホップに関するインタビュー
・ゲンスブールやゴダール、ボリス・ヴィアンなどの音楽/映画批評
・オリジナル・ラブやカヒミ・カリィ、ピチカート・ファイヴなどの渋谷系誕生の瞬間
・BOREDOMS登場の衝撃
etc...
といった具合に内容は多岐にわたっていますが、90年代に一世を風靡したサブカルチャーの体系的批評として一本の筋が通っており、川勝さんがその眼で捉えた都市と文化の一瞬が切り取られ、交錯し、ある種の物語を成しています。
「サブカルチャー」なんて今じゃ滅多に聞かない言葉だけれど、「サブカル」とは一味違う良い意味でのスノッブっぽさ・お洒落さがあり、サブカルチャーのなかで育った先輩方を羨ましく思います。
と同時に、「あの時代特有のとんがった空気」や「文化を語ること/語られることの面白さ」を21世紀に伝えてくれた川勝正幸さんに、当時を知らない一若人として心から感謝の意を表明いたします。
『ポップ中毒者の手記2 その後の約5年分』『21世紀のポップ中毒者』の文庫版も楽しみです!
はっぴいえんどBOX (CD-EXTRA仕様)
僕は『HAPPY END』しか持ってなかった。3rdを気に入っていたのでいずれ他の音源も欲しくなると思い、思い切って買った。とても満足している。『HAPPY END』は、それぞれの曲はいいんだけどまとまりが無くてアルバムっぽくないな、と感じていたので『ゆでめん』のバンドっぽさに驚き、『風街』の進化にまた驚き…そして3rdのバラバラ感の理由も解った。
他の方も書いているように、僕もブックレットの充実が購入の大きな理由だったが、それは期待に違わないモノだった。写真、インタヴュー、ファミリートゥリー、ディスコグラフィー(はっぴいえんど、コンピレーション、プロダクション・ワークス)等、マジで網羅している。楽譜集には写真やイラスト、コラムも収録されている。CDも手書き歌詞カード含め再現されているのが嬉しい。
本当は全部聴いてからレビューしようと思ったが、未だにオリジナル部分ばかり反芻している。このBOXには何年何十年と付き合うことになりそうだ。