イングマール・ベルイマン コレクション [DVD]
戦争は始まってしまうと敵も味方もない、残酷な殺し合いであり破壊行為である。この映画は、戦争の本質をストレートに伝えてくる。今観ても全く古びておらず、現代に通じる普遍的な悪(戦争)を描いている。また、戦争という暴力による人格崩壊のドラマでもある。製作年はベトナム戦争たけなわの頃であり、ベルイマンの静かな怒りが感じられる。映画は、戦争に訳も分からず巻き込まれていく夫婦の物語として進行する。なんとなく軍用車が増えてきたりして戦争が近づいているのを予感させる前半から、突然の軍用機の墜落・激しい爆撃、敵味方に拘束されての尋問と続くあたりは、まるで不条理劇のよう。気弱などちらかというと臆病な夫(マックス・フォン・シドー)が後半、妙に逞しくなっていくのが怖い。戦争による惨状を呆然と見つめる妻役のリヴ・ウルマンが好演。即興で撮ったという戦争前の夫婦の語らいの長回しのシーンでの表情・演技がまた素晴らしい。
「狼の時刻」と同様に特典映像、予告篇、音声解説、フォトギャラリー付き。このフォトギャラリーは枚数が多くて、撮影現場の雰囲気が伝わってきて良いです。
処女の泉 [DVD]
映像良し。俳優良し。緊張感あり。
清冽な映像美の中に、突然現れる衝撃的な強姦シーン。
白黒なのに芸術的なのに、あまりの生々しさに初めて見た当時、とてもうろたえた覚えがあります。
クリスチャンではない日本人には、今ひとつ実感としてわからないことがあるのだろうけれど、それを抜きにしても、映画芸術が到達しうる最高峰だと思います。
白黒なのに、ではないですね。白黒だからこそ光と影のコントラストが生きて、見る側に説得力をもって迫ってくるのでしょう。カラー作品からの後追い体験なので、リアルタイムの時代状況はよく知りませんが、ベルイマン作品の中では、わりとわかりやすいほうで最も重要な作品だと思います。必見。
グレゴリアン・チャント・ベスト
十数年前グレゴリオシャントが流行った頃、存在は知っていたもののじっくりと聞く機会がなかった。機会がなかったというよりは、自ら探す努力をしていなかったというところか。その頃にこのCDに出会っていれば、歌の技術も少しは違っていたのかもしれない。指揮者の先生が、「こういうの聞くと勉強になるんだよ」とさりげなくおっしゃっていたことが、今になってよく分かる。
単旋律の美しさと宗教曲特有のうねりがよく表されている。できれば大きい部屋で心を落ち着けて目をつぶりながら聞いてみたい。これから数百年後に聞いたとしても必ずや何かを学ぶことができる一枚だと思う。そういう価値観がグレゴリオシャントにはある。