沼地の記憶 (文春文庫)
国内のミステリー好きにお馴染みのT.H.クックの最新刊。『緋色の記憶』を初めとした記憶4部作は有名。人物、心理描写、造詣に長けた作風、昔と現代をカットバックさせた手法は本作でも健在。デニスルフレンなど、人間の行動、心理を中心に描くミステリーが多くなった昨今、まさにその代表格が彼と言えよう。フーダニット、冒険、派手なサスペンスを読みたい読者には敬遠されるストーリーであろう。但し、本さkは地味な作風ではあろうが、90年代以降、国内で発表された翻訳ミステリーの例えばJディ−バー、Mコナリーといった動のミステリーとは対極の静のミステリーの代表格、対極をなす存在感である。
緋色の記憶 (文春文庫)
ステレオタイプの話なのだが、ぐいぐい引き込まれる。読後しばし余韻にひたる馥郁たる香りがあった。鴻巣友季子さんの仕事は賞賛に値する。名訳だ。原文の詩情に直接ふれる事はできないが、クックの文章を少しは理解した気がした。
過去の出来事を振り返るというのは、その出来事が衝撃的であればあるほど封印を解くという忌まわしい作業が伴うので、真相に近づくにつれ鼓動がはやくなってくる。だが、クックは抑えた筆勢で静かにそして丹念に物語を綴ってゆく。ラストでも、よくあるように同時進行のカットバックを使ったりせず、真正面から事の真相に近づいてゆく。ああ、こういう書き方もあるんだな、と思った。
小説の醍醐味を味わった。文庫で、こんなに素晴らしい作品を読めるとは幸せなことで!ある。
Tact Taro Best Works 2000-2005
注目していた映画音楽、ドラマメインテーマがこの方の作品だと知って感動しました。
「特ダネ」の小倉さんが絶賛していて聴きました。よりすぐりの作品集。「蝉しぐれ」、「血と骨」、ぞくぞくしました。