ひらいて
かつてこれほどドロドロした青春小説を読んだことがあっただろうか?
それほどまでに主人公の愛がクラスメイトのたとえを想う気持ちはおぞましい。
けれど、私には彼女の生き方が手に取るようにわかる。
私自身は彼女ほど恋愛に執着したことはないけれど(そもそも心から人を手に入れたいなんて考えたことすらない)、それでも彼女が自ら他人に気に入られる行いをしておきながら、自分に向けられた好意を邪険に扱う姿は学生時代の私そのものだと思いました。
それでいて彼女の場合は自分から好意を寄せた人にはなんとしてでも振り向いてもらいたいという思いがとても強くて。
彼、たとえ自身が無理なら、その恋人である美雪を利用してでも…という部分はさすがに恐ろしいものを感じます。
でも私は愛がたとえに惹かれる気持ちもよくわかる。普段は目立たないクラスメイトの瞳の暗さを自分だけが気付いたときのうれしさったらないですもん(笑)
まあ私の場合はテレビの中の人だったけれど。
そして不思議なことに、私はたとえの彼女、美雪の思いもよくわかる。
生まれながらの病気のせいでなぜだかクラスに馴染めない自分、そんな自分に対する腑甲斐なさ…
でもそれを今更悲観するつもりももうなくて、仕方ないと諦めて自ら孤立した生き方を選ぶ。
だけれど、同じ生き方をする人とは少し視線を交わせばすぐにわかるし、惹かれ合う。
それがたとえと美雪の関係で。
その間に愛が入る隙なんか全くないのに、それでもたとえを手に入れたくなるのはもはや意地なのか、それとも…
きっとこの作品は万人受けはしないと思います。
ですが私にとってはかなり重いメッセージを持つ一冊でした。
それにしても年々、綿矢さんの描く高校生に自分が当てはまっていくのが恐ろしい…
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上戸さんと神木龍之介さん2人のシーンがメインですが演技力が圧巻です。上戸さんは肌を見せなくても、唇や目線や声や空気で艶やかなエロティックさを表現していて素晴らしいです。神木さんは子役にありがちな丸っこい印象ではなく、端正かつシャープな顔立ちと利発そのものといった存在感が最高です。
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やっぱり「萌え」などと言われてしまう作品になっているんだと思う。上戸彩も神木君もそれぞれむちゃくちゃ可愛い。
主人公の悩みなんかは全てナレーション(上戸彩の語りは悪くなかったと思う)と「ある部屋」での会話にまかせて、演技は上戸彩の女子高生的なカワイさを全面に押し出しているように思えてならない。
かたや神木君も「大人がかわいいと思ってしまう男の子」を見事に演じきっている。主人公のほうはともかく、彼のほうは原作者の綿谷りさが表現していた男の子にすさまじく近い印象を受けた。
別に刺激的な内容でもないが、動物が出てくる映画と似た感じで「ああーかわいいなぁ」なんて気持ちで見られるかもしれない。思春期を過ぎていれば。
勝手にふるえてろ (文春文庫)
ランキング番組でこの作品を知り綿矢作品を初めて読みました。
過去の片思いと現在の求愛のはざまに揺れ動く女性心理を読みたくて購入しました。
独特なリズムで場面毎におもしろさを感じましたが、感情移入する前に終わってしまった感じです。
中学時代会話もない状態で当然のごとく名前を忘れられてたことより、再会した現在にマニアックな話題に共通点が見出せたほうが、よっぽど今後に繋げようと気持ちにさせると思うし・・・4人で集まる時に名前くらい確認してくんじゃないかな〜なんて、つまんない突っ込みを入れつつ読んでると、そのまま終わってしまいました。
かわいそうだね?
ちょっと困った彼氏や友人に、振り回されているような主人公が、結末のほうでは、ただ振り回されるだけではなく、深く理解することで新しい段階が訪れる、認識のレベルが上がる、という、「かわいそうだね?」「亜美ちゃんは美人」ともそういう小説だという気が、しました。
「人間の成長が描かれない小説はダメだ」というのをよく耳にしますが、私はなぜダメなのかよくわかりませんでした。成長なんてしなくてもいいんじゃないの?と内心思っていたのです。しかし経験を通じて人間が成長するということのすばらしさを、この本に収められた2篇の小説から、新鮮な形で教えられたような気がします。成長によって得たものが、どこかほろ苦いものであって、ハッピーなのかどうかはよくわからないのですが、このさわやかな読後感は著者の筆力の妙なのでしょうね。
芥川賞のあと、しばらくのあいだちょっと?な印象が綿矢りさにはあったのですが、このところは面白い作品を多数発表しており、作家としてズルリと剥けた姿を、大分年上の読者として寿ぎたい気持ちでいっぱいです。