カリスマ〈上〉 (幻冬舎文庫)
「神の郷」と言う宗教法人の教祖・神郷宝仙が主人公である。しかし彼は神を信じておらず、教祖たちのことをカモだと思っている。その彼の右腕となっている氷室誠二は家柄も良く高学歴だが、教祖に心酔しきっている。そして、神郷が毒牙にかけようとする旅行代理店の店長・城山信康の妻・麗子が、「神の郷」の「悟りの会」に参加するまでが上巻に描かれている。
教団内で好き勝手なことをし、化けの皮が剥がれないよう努める神郷、彼に騙されていることを疑いもしない幹部教徒も含めた信者たち、嫉妬深くて情けない城山信康の言動などが、新堂冬樹ならではの筆致で書かれている。しかし、この作品で描かれる人間の醜さには、嫌悪よりも滑稽感が漂う。特に教徒の前で咄嗟に取り繕う神郷宝仙の描写は秀逸である。(下巻のレビューに続く)
吐きたいほど愛してる。 (新潮文庫)
新堂冬樹の最新刊。一昨日購入して、早速読みました。
読み出したら止まらないってわけで、2日間で読了。
今回は、中編4編を収録した作品集。いずれも「小説新潮」に掲載された作品。
これまでに過剰な愛、勘違いの愛情表現、凄惨な愛情等々、様々な愛の形を描いてきた氏ですが、この作品群には今までに無かった愛の形が伺えます。
それが帯に書いてある「自己の中心で愛を叫ぶ!」と言う表現が表している通りの愛の形。
人それぞれ愛情表現は違うだろうけど、ここまで自己中心的な人は居ないだろう、と思う。
しかし、最近の世相を見ていると、ちょっと心配になったりもします。
ともかく凄く極端な愛がここにあります。
著者最凶傑作(帯より)を楽しんで下さい。
白い鴉 (双葉文庫)
詐欺グループ『白い鴉』。何のために詐欺を働くのか、その正体は。黒新堂と白新堂の融合作品。読んでいる途中で、全貌が解ってしまうのだが、ラストに涙。素直な気持ちで読むべし。
様々な詐欺の手口、なかなか面白い。鼠小僧か、ルパンか。