J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲(全曲) (J.S.Bach : Cello Suites No. 1-6 / Mario Brunello (Vc)) (3CD)
コンサートを聴きにいったときは、かなりのって演奏していたが、このアルバムでは真摯に弾いている。
無伴奏チェロ/マリオ・ブルネロ
無伴奏とはなっているが、実際にはチェロ独奏と「何か」との共演による曲が3つ。ブルネロとは盟友と言われるソッリマの曲はエレクトロニクスと、スカルソープは合唱と、そしてシェルシは打楽器との協奏による。
ソッリマは、その華麗な音の饗宴に耳を奪われる。どこまでが独奏の音なのかもはや判断がつかないが、それでもなおすごいテクニックで弾かれているらしいことはわかる。スカルソープの曲は、以前ウィスペルウェイの独奏によるものが出ていたが、このCDでは合唱が加わったことにより、静謐さが増したようだ。3人の作曲者のうち、シェルシのみ既に他界しているが、曲の印象もやはり少々インパクトが弱いと感じられる。逆説的だが、一番「現代音楽風」であることが古さを感じさせるようだ。
ブルネロの演奏は、そのテクニックと、さらに、何か人を引き付ける吸引力でもって聴く者の耳をつかむかのようだ。ここには三者三様の独自の音楽が奏でられており、未知の新しい音楽との出会いがある。
マリオ・ブルネロ 「アローン」
何年か前のNHKの芸術劇場で、ブルネロをソリストに迎えてのサン=サーンスの協奏曲が放送されていました。
そのアンコールとして、ブルネロがカサドの無伴奏の3曲目を演奏したのですが、
その時の驚きは今でも覚えています。
切れば血が出そうな、生き生きとした彼の演奏を聴く度に、
これが音楽なんだなと思います。
このアルバムは最初から最後まで無伴奏で演奏されていますが、
聴いているうちに、たった一人で弾いている、ということを忘れてしまうくらいの内容の密度が感じられます。
全ての音楽好きに聴いてもらいたいですね。