欽ちゃんのコントは基本的に繰り返し。同じことを何度も二郎さんにやらせて、そのリアクションで笑わすというもの。のちに、テレビの欽どんでも素人相手に同じ手法で成功した。二郎さんはとても器用な人で、歌も演技もそつなくこなせるが、単独ではどこかわざとらしく見える部分がある。欽ちゃんはそんな二郎さんを追いつめながら、思いもかけない表現を引っ張りだしてくる。
本作もその「繰り返し笑い」がしつこく展開されるのだが、どのコントもよくできていて面白い。というより、よく出来上がった瞬間をフリーズした状態といえる。同じネタを何度もやって行くとこの面白さは出ないように思う。当時のコント55号の絶妙な呼吸が、舞台をそのまま中継するような形でおさめられているところがいい。客も大人の男ばかり、なかには酔っぱらいまでいるという雰囲気が、これまたストリップの幕間のコントの空気をかもしだしている。
コントはどれも理屈ぬきに面白い。が、DVDにするにあたって、もうちょっと工夫はできなかったのだろうか。VHSのビデオをそのまま素材にしました、みたいな作りはちょっと安易な気がするので1点減点。2枚組2000円くらいで出せばいいのに。
昔は、コメディアン(今のお笑い芸人とは全く違う)、歌手(今の自称アーティストとは違う)も花を添える役から主演作まで、映画出演は、人気が出てくればやる仕事の一つだった。見て下さい。監督や共演女優陣。こういう企画が、普通に出来たのだ。脚本、演出、笑わせどころは、今の映画やTVに毒された目から見れば、やや古いかもしれないが、それを補って余りある味わいがある。「趣味は自分磨き」とか「性と官能が人生の全て」とでも言ってるような女優のつもりの勘違いセックシータレントには、死んでも勝てない、倍賞、太地(二人とも若い分とてもキュート)を脇役にしてしまう若き日の由美かおるのきらめきを見よ!明快なストーリー展開の中を、上記の美女たちを相手にドタバタ駆け抜ける二人の庶民的な爆発的パワーを堪能できます。
思えば、コント55号は相当に斬新だった。漫才でも喜劇でもない「コント」という新しいお笑いの様式もさることながら、テレビ画面の枠をはみ出すパワフルな狂気と、「野球拳」に代表される確信犯的な俗っぽさが、理屈抜きで子供心を鷲づかみにした(そのぶん世の親たちには大いに顰蹙を買って嫌われたが…)。
やがてブームは沈静化し、欽ちゃんは一時の低迷を経て「欽どん」「欽どこ」など、家族で安心して楽しめるお笑いへと芸風を昇華。二郎さんは「夜明けの刑事」など演技の世界へ活躍の場を移したが、一定世代以上の人にとって、永遠に二人は「コント55号」の欽ちゃんと二郎さんである。そんな二人が浅草時代は互いに反目していたこと、二人が世に出るために事務所社長の人一倍の熱意と努力があったこと等、本書を読んで初めて知った逸話も多い。会話や描写が妙に青臭かったりもするが、それも「昭和」の空気感なのかなあ〜と思わなくもない。
コント55号の全盛期を知る人にとっては、何とも魅力的な本だと思います。天才肌をもって謡われた欽ちゃんこと萩本欽一さんは、想像以上の下積みを経験されていました。小劇場からTVへ雪崩を打って演芸人が進出してゆく中で、TVの方法論によらず、逆に自分たちの笑いでTVそのものの笑いを変えてゆく様が、重苦しい葛藤とともに描かれています。ナイーブな笑いの革命者、反逆者と言えます。コント55号の演出は欽ちゃんに支えられていたのは確かですが、欽ちゃんのアドリブに強烈に対抗できる人が二郎さんだったということも良く分かります。やはり不世出のコンビですね。コント55号の笑いは、この二人だけのもので、ジャンルに括られない凄さがあります。この本は、二人の出会いの頃から、売れっ子になるまでの時代が描かれていて、笑いの原点が偲ばれます。二人の伝記に近いでしょうか。コントの凄さについては今ひとつ十分とは思えませんでしたが、こればかりは実物を見ないと無理でしょうか。ちょっと後半端折っている感じもしますが、55号のファンの方には十分お勧めできます。
もっぱら社会学的な本かと思っていたら,お笑い界の話が半分を占めていました。
今では少し想像出来ないかもしれませんが,昔は俳優やミュージシャンがテレビを席巻していました。
ラテ欄(新聞のテレビやラジオの番組欄)を見ると,確かにドラマや硬派な歌番組が多い。
映画→テレビという流れも影響しているんでしょうね。
昔の人はあんなにドラマを消費していたのか...と少し感嘆しました。
今は立場は変わって,俳優も何かしら笑いをとらなければならない様な空気になっている。
そしてそもそもお笑い芸人の立場自体が大きく変化している。
今やオピニオンリーダー的な立場になっている芸人。
これからいっそう芸人は細分化され,特定の専門知識を持ったコミュニケーションのプロという位置づけが強くなっていくかもしれないですね。笑いはその上で欠かすことのできない強力な手段となる.
|