とてもゆったりとした文章で、構えず気楽に読むことができます。その気になれば、通勤電車の中であっという間に読了することもできるでしょう。でも、個人的に、それはこの本に似合わないような気がします。自宅でくつろいでいる時や旅先で、ふと気がついた時に手にとって、しかも適当な章から読む。各章はテーマ別になっていますが、時系列で並んでいるわけではないのでどこからでも読み始められます。そのとき、iPodやiPhone、iTunesが手元にあれば、きっと幸宏さんのあの曲やこの曲を聴きたくなるでしょう。加えて、本の中で紹介された曲をiTunesで探す楽しさ、見つけたときの嬉しさは格別です。本書と曲から、これまで見つからずにいたパズルの1ピースが必ず見つかります。そして、それまでは完成したつもりでいたパズルにも、未来の1ピースがあることに気づくはずです。是非カウチで、コーヒー片手にどうぞ。
本文のほうは、「ニューヨークシティ再訪」、「ビート、そして反逆の天使たち」、「ケルアック、彼のホームタウン」、「ビートとの対話」という章立てになっています。もちろん「まえがき」、「あとがき」以外のほとんどの文章は、雑誌『THIS』や詩とエッセイ集『ハートランドからの手紙』に収められていたものです。でも、改めてビート・ジェネレーションのレポートとして文章が編集されたことで読むのが便利になりました。そして、やはり佐野さんは積極的に取材・調査も行っているうえに、文章表現も巧みなので、この本を読めば、日本のトップ・レヴェルのロック・ミュージシャンがもっている高い言語表現力や知性を確認できる、と思います。
今回貴重なのは、本文のほうではなく、『Kerouac His Hometown of Lowell』と題された特別付録のDVDのほうです。佐野さんがケルアックの故郷とそこにある墓を訪れた際の記録です。約7分のモノクロ映像にご本人がナレーションを入れています。佐野さんがケルアックの墓を訪れた時の模様は、以前、アルバム『フルーツ』リリース時のヴィデオ・クリップにも使用されました。でも、こういうかたちで独立してケルアックの故郷探訪のドキュメント映像の完全版が出るのは、はじめてのはずです。
アートワークの意匠が同じことを見てもわかるように、本書とCD+DVD『BEATITUDE-Collected Poems and Vision 1985-2003 motoharu sano』とは、詩を扱っている点で、姉妹の関係にあります。併せてお楽しみください。
当時やたら多かったリミックスもの。今回の被害者(?)は、高橋幸宏と鈴木慶一によるユニットが81年に発表した『出口主義』。ついにこんなものまでと思って聴き始めたのだが、意外に楽しめた。もともと輪郭のはっきりしない謎めいたサウンドなだけに、アンビエントな処理が合うようだ。手がけているのは、エイフェックス・ツイン、808ステイトのグラハム・マッシー他。10年以上の歳月を隔てたテクノ野郎の共演盤。
僕はふたりの1st『出口主義』よりもずっと後になって、ムーンライダーズを聴きました。
慶一さんは、このBEATNIKSで、ライダーズではできない音楽をやっているような気もします。
でも、こう言っては誤解されるかもしれませんが、BEATNIKSのほうが、ふたり別々のときよりも、格段に「カッコイイ」曲作るんだなと、1st以来思っています。
3作目は、ものすごい才能が詰まっていて、3作の中でもいちばんのお気に入りとなりました。
ムーンライダースは大好きだがあるいみ諦観みたいな落ち込ませ要素もあって時々聞くのに覚悟がいる。
高橋幸弘サンも大好きだが「やさしさ」が息苦しい時もある。
で、ビートニクスになると適度に離れて混ざっていい感じに「いつでも聞ける」気持ちいい音楽になるのでした。
いや面白いなあ(個人的感想)。
最初のJack!で引き込まれつつJackがつく曲を思い出し、walking to the beatでも思い出し、ああいろいろ昔の曲も聞きたくなってきた。
もう一枚くらい、また数年後でいいんで作ってほしいですお願いします。と言いたくなるイイモノだと思います。
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