型破りなお殿様、熊田治隆の参勤ストーリーの続きもの第3巻は、滋賀は水口・三重は桑名を経て岡崎宿までの物語が綴られる。第1巻一
部の方のレビューにある様に、本作は使用される台詞表現が若干難解で設定の理解に苦労する部分もある。しかしその先には人物同士の
絶妙な駆け引きのドラマが見えてくる。多少読解に苦労しても十分報いのある作品だと思う。
本巻の中心エピソードは治隆と馬番の九作の掛け合い。御庭番として参勤の行列に潜り込んた九作に治隆からある命令が下り、御庭番とし
ての正体が見抜かれたのではと追い詰められる九作の心理が、デフォルメされた可愛らしい絵柄での物語とは思えない程の緊迫感をもって
描かれる。顛末は実際に読んでお確かめいただきたいが、この事件で何かを心に決めた様子の九作がどう変わっていくか気になる処。
初盤は謎に包まれた殿様・治隆であったが、本巻では彼の核の部分がおぼろげに見えてくる。体裁に囚われることをめっぽう嫌い、自然体そ
のものの姿を愛する彼の思想は、17話「好かぬもの」の中の台詞「己の望む形に…」からもはっきり伝わってくる。
そんな彼が最も忌み嫌う者、権力を盾にする旗本宮野の一行と岡崎宿で差し合う22話は本巻きっての大きなクライマックスだ。ここで治隆が
執る豪快な行動が実にらしく、対象の身分を問わず言動にびしっと筋を通す彼の生き様に憧れる。しかし窮屈な世で皆が彼の様に生きられな
い難しさも痛感する。それは本巻にて筆頭家老・長門がぽそりと呟く台詞「殿のように生きるは我らには難しいか」に滲み出ている。
和泉については、漸く初盤纏っていた堅さが取れてきた感じ。治隆の前で堂々と居眠りをする等案外図太い神経の持ち主だという発見もある
が、その変化は治隆が和泉を試す一連の試みを通し、彼が成長しつつある証かもしれない。居眠りをする和泉の顔を例の「ぎょろ目」で覗き込
む治隆のシーンは、まるで父子の様な風合いで思わず微笑ましくなる。
他にも初登場となる治隆の正室・菊姫の胆の座りっぷり等充実したエピソードが満載。次巻はあの松平定信の影にまたまた波乱の予感が、期待。
武家物/時代物と云えば、合戦やチャンバラ、もしくは 捕物帖あたりがポピュラーであろうか。しかしこの物語は なんと今のところ全編、地味な参勤交代を中心に進行している。
絵柄・-ストーリー構成の独特な癖から、一回ざっと読み通しただけでは、 誰が誰なのやら、道中いったい何が起きているのかさっぱり分からない。 しかしそれぞれの立場に応じた登場人物たちのスタンスと そこからくる「語られない」本音が推測できれば、 読み返せば読み返す度に新たな発見があり、 スルメのように味わい深い、とてつもない傑作である。
ストーリーの軸は退屈な、官僚化してしまった武士の陰鬱な政治劇である。 マンガと侮ることなかれ、表舞台の一つ後ろで繰り広げられる攻防と それを描写する鮮やかな手腕は、凡百の時代小説とは一線を画している。
歴史資料の丹念な読み込み、それに基づくしっかりとした世界観・ ドライな人間描写・綿密に張られた伏線・スタイリッシュな視点と ウイットに富んだユーモア、どれを採り上げても一級品である。
第4巻である本書では、前巻まであったどんでん返しのような展開は無く 粛々とストーリーが先に進んでいく。エネルギーが溜まった次巻に期待が高まる。
跡取り問題がきっかけで身を寄せていた盗賊一味を抜け、「でっかいこと」を成すため西へ向かう弁蔵・宗次二人の旅道中もの第2巻。
前半ではある約束の為にわざわさ西へ来た道を江戸へ引き返す二人の道中を、後半では目的の地・大阪へ着きそこで始まる二人の 大阪での奮闘を描く。本巻では前半・後半それぞれに描かれる二人の表現の対比が個人的に面白かった。 以下内容に触れるため未読の方はご注意願いたい。
本巻の帯に「男の度量が試される」という文句があるが、それは前半の展開を指していると思われる。箱根の関所を抜ける前の山中 、二人はとある役人に出会いあるものを託される。二人がわざわざ来た旅路を引き返す理由は核心に触れるので詳しく言及は出来な いが、ここで描かれる盗賊と役人という善悪を超越した男同士の約束は二人の器の大きさをこれでもかと見せつける。しかしながら盗 賊仲間衆からある頼みを受け有頂天になる二人の若さと青臭さにこそ、妙に親しみを覚えた。
転じて後半は、前半で男の度量を見せつけた彼らが小物に見えてしまうから不思議だ。その最大の理由が二人が江戸から頼ってき た大阪の大盗賊・夜坂の親分の存在だ。でかでかと初登場のコマ一杯に描かれる親分の貫禄の表情、発せられる一言の重みが恐 れ戦く程のインパクト。彼にとっては生意気な青二才としか見えぬ弁蔵・宗次の二人、キセルで軽くこづかれるシーンはまるで老境の 親にたしなめられる子供の様で二人を可愛いとさえ思ってしまう。 そしてもう一人、親分を世話する謎の男・芳の存在が気にかかる。きりりとした目をした利発な感じのこの男、弁蔵・宗次と同世代程に 見え、きさくに彼らを世話し共に酒を飲んでいるが、何やら只者ではなさそうだ。
親分や芳の他にも大阪の地は男も女も一筋縄ではいかぬ強者揃い、まさに彼らの「修行」の地として御誂え向きではないか。
「でっけえこと」への成就はまだまだ長く険しい。巻はいよいよ彼らの実力が夜坂一味で試される様子、元鞘である赤目一味以上に血 の気の多い党メンバーとの絡みも含め展開が熱を帯びてきた。
初めてオノナツメの作品に触れる人には向いてないと思う。 多分リストランテあたりが良いでしょう。 内容が難しい上に字も多くて一度で理解するのは難しい。 でもオノナツメ好きの俺は、どの作品も数回読むから問題ないし楽しかった。
原作の雰囲気を体感させる様な作品です。 原作に忠実に演じられているので、マンガを片手に聞くとより楽しめるかと*^^* キャストコメント&フリートークもとても楽しめました!! ☆1つ無いのは、もうちょっとだけアドリブが欲しいなぁ、と思いまして減らさせて頂きました
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