自分が見たことのあるAntonio Lopez Garciaの画集の中では一番良い本だと思います。 それでも残念な部分があり、星五つの評価をつける気にはなれませんでした。
その残念な部分とは、一部の作品について、ディテールが大きく 印刷されたページがあるのですが、そうしたページの画像の多くは 見るからに解像感が低く、ディテールを撮り直した画像データではなく、 単に全体の写真の一部を拡大して印刷しているだけのように思われる所です。
少し前に、このAntonio Lopez Garciaとも交流があったらしい 磯江毅の「写実考」(美術出版社)という画集を買いましたが、 そちらはディテールのページも解像感の高い見応えのある画像です。
正直な所、磯江毅の「写実考」とくらべてしまえば、このAntonio Lopez Garciaの 画集(d・a・p / TF Artes Graficas)はディテールの画像のみならず、 全ての画像の印刷品質が一段以上低く、その意味では 総合評価も星二つぐらいマイナスにしたい所です。
ただ、この本には良い所もあり、自分が特に気に入ったのは 最後の方に収録されている描きかけの絵の画像です。 こんな風に描き始めるのかと、興味深く見入りました。
誤解の無いように書き加えておきますと、 決してこの本の印刷品質が劣悪というわけではありません。 洋書にしては上等な部類だと思います。
初期の頃の石膏デッサンから、現在までの作品集までです。卓抜なデッサンから、フォルムを追求したものもあり多彩です。 顔の比率から、人体のパーツの各部分のデッサン、作品化するまでの過程がよく理解出来ます。 静謐だが、非常に重厚なデッサン集です。室内でモデルをセッティングしている写真があり、 時間が停止した感覚があります。 画家自身が見た対象物の質と量を、キャンバスに写し取る事が出来ればそれだけで凄い事です。 この画家は、生死の問題を問い、構成要素としての事物が存在している事への問題を問い、 気の遠くなるような膨大な時間をかけて作品化してます。 結局、どういう作品が生まれるかは、如何生きるかにより決まると思います。 ロペスの最新の作品集です。手元に置きたい本です。
ホキ美術館で作品を見て以来、注目している画家です。地方の為、なかなか作品を見る機会がありませんが、この画集は少しでも作品を見た時の感動を思い出させてくれます。
磯江毅の画業が凝縮されている素晴しい一冊。彼の緻密な仕事に応えるかのように、数々の図版はもちろん、彼が残した言葉や周辺の画家たちの様子など細部にわたって編集され、リアリズムに傾倒している画家や画学生にとって、大きな刺激となるであろう一冊に仕上がっている。そして、この画集を見終わった後、日本の美術界、いや世界の美術界において本当に惜しい人を失ったのだと改めて感じさせる一冊でもある。
図版が小さいので星一つ減らします。 新作、代表作、アトリエの図版が掲載されていて良かった。 画集入手困難画家なのでこの機会に。
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