モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第3番
久しぶりに若々しいモーツァルトを聴いた。バイバはやや硬さはあるもののはつらつといて初々しい演奏は好感が持てる。指揮者のヘンヒェンはまだ日本では知る人ぞ知る存在であるが、彼の演奏は、鞭のしなるようなフレージングと典雅さを併せ持っていてたいへん高雅な印象をあたえる(彼の指揮するハイドンの交響曲は一押しである)。このモーツァルトは両者の特徴があいまって典雅ではつらつとした響きをかもし出している。
同時にカップリングされたシューベルトのロンドとハイドンのコンチェルトは圭曲でありながらなかなか演奏されない曲でもある。こちらもモーツァルト同様典雅な調べを持っており聴き応えがある。
ショスタコーヴィチ:ヴァイオリン協奏曲第1番
若手と言えますが、とてもすばらしい演奏家です。
某コンクール1位というのも納得できます。
実力は申し分なしで、たぶんきっと将来は大きく取り上げられるようになるでしょう。
本日、実はその演奏を生で聴いてきたのですが、まさに大器です。
きっとこの盤も数年もすれば再販で廉価盤が出ることになるでしょうが、それまで待っているよりも今は高くても今購入することをお勧めします。
チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲、なつかしい土地の想い出、白鳥の湖より
クレーメル、マイスキー、ヤンソンスなど、著名なクラシック演奏家を多く輩出したラトヴィアから、才気溢れる魅力的な女流ヴァイオリニストが現れた。バイバ・スクリデ。‥ヒラリー・ハーンやリサ・バティアシュヴィリ、五嶋みどりなどの70年代生まれの女流ヴァイオリニスト達の次の世代、80年代生まれの実力派女流ヴァイオリニストを代表するであろう存在感を、卓越したテクニックと表現力で注目を集めてきたのがスクリデである。その彼女が満を期して録音した、今回のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は期待に違わぬ素晴らしい演奏だった。以前からの愛聴盤でもある、渡辺玲子のライブ録音と比較するとストイックというか、メリハリに乏しいような印象を受けたのだが、何というかスクリデの演奏には「歌心」があり「無機質な素っ気ない表現」とはまるで違う。第1楽章の第1主題と第2主題を同じ様な表現で演奏せず、明確に変化させた表現を聴かせるのも、スクリデの才気を感じさせる。第2主題の後半でテンポを落とし「タメ」を意識的に作っているのも、彼女ならではのチャイコフスキー解釈の一つであろう。テクニックは十分あるにも関わらず、それをひけらかさない。カデンツァでも緩急を生かした演奏で、耳障りな音を鳴らさない。テクニックや美しい音色で聴衆を魅了するタイプではなく、一昔前の大家の演奏家のような「自身の奏でる音楽で聴衆を押し流してしまう」様な自在な表現力を身につけた卓越した感性の個性的なヴァイオリニストだと感じた。指揮者のネルソンスも手際良い伴奏で好感がもてた。30歳にもならないうちにバイエルン放送響を指揮するなど、師匠ヤンソンスのコネだけで才能は未知数な指揮者だと最初は思ったが、どうやら才能は本物らしい。最近はシュタインバッハーとの録音が多いが、これからのスクリデとの録音も楽しみだ!