ショパン:24の前奏曲集
この一枚のCDに、昔のLPレコードだったら二枚分の演奏が収められています。しかも演奏は、わたしの一番のお気に入りピアニスト、マルタ・アルゲリッチ。期待に違わぬ素敵なピアノに魅了されました。
殊に、『英雄ポロネーズ』『幻想ポロネーズ』の演奏(いずれも、1967年1月の録音)の、何てまあ美しかったこと! 燦然としたピアノの響き、天馬空を行くが如きダイナミックな躍動感など、本当に素晴らしかったです。
続いては、『スケルツォ第3番』と『舟歌』の演奏。弱冠二十歳になったばかりの、もといっ、十九歳になったばかりのアルゲリッチが奏でた、初々しいきらめきを湛えた演奏。これもいいですねぇ。録音は両曲とも、1960年の7月。
こうした若き日の躍動感あふれるピアノに比べると、やや魅力は落ちる気がしますけれど、『24の前奏曲』の演奏だって決して悪くはありません。あっという間に過ぎ去る記憶の風景を、さっとスケッチして描いたみたいな小品集。
なかではやはり、有名な「雨だれ」の曲(第15曲)が印象に残ります。ドビュッシーの『前奏曲集』につながるピアノの響きを感じましたね。優しく雨ぞ降りしきる、そんな詩の一節が思い浮かんだ珠玉の名品。
1977年2月の録音。
アルゲリッチ・プレイズ・モーツァルト 東京ライヴ2005 [DVD] [Import]
アルゲリッチが2005年にすみだトリフォニー・ホールで行ったコンサートのライブDVDです。収録曲は
モーツァルトの
ピアノ協奏曲第20番ニ短調 K.466
3台のピアノのための協奏曲へ長調 K.242
ロンド ハ長調 K.373
交響曲第32番ト長調 K.318
ベートーヴェンの
ピアノ・ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 ハ長調 Op.56より 第3楽章
このコンサートの趣旨は「グルダを楽しく想い出す会」。随所に亡き師に対するアルゲリッチの思いがちりばめられています。まずピアノ協奏曲第20番はグルダも好んだ曲。彼がミュンヘン交響楽団と収録したDVDMozart Concertos [DVD] [Import]と比較すると面白いです。3台のピアノのための協奏曲ではグルダの二人の息子を迎えて共演。
そして、最後の三重協奏曲では人気急上層中のカプソン兄弟が登場。若いアルゲリッチがグルダの薫陶を受けた様に、彼らはアルゲリッチに見いだされ、育てられた若い世代です。
クラシック音楽の世界における人の繋がりを感じさせる1枚。アルゲリッチだけでなく、グルダとのカプソン兄弟のファンの方にもお勧めです。
ただ定価を見るとリージョンフリーの輸入盤Martha Argerich Plays Mozart: Live From Tokyo [DVD] [Import]の方がよりお得なので、そちらがお勧めです。
小澤征爾 / マルタ・アルゲリッチ [DVD]
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幻のショパン・レコーディング1965
このピアニストを見よ。
たぎるようなテンペラメントと、極限まで研ぎ澄まされた抑制。両極端のぎりぎりのものが、アルゲリッチの内面で渦を巻いている。こぼれてきそうな瑞々しさと爆発寸前の緊張が、この人の演奏には内在している。まるで、生まれたばかりの幼子のなかに百年も生きた老人の魂が息づいているようだ。
スタジオ録音では曲をとおして三回、本番と同様に集中して弾くだけ、というのがアルゲリッチのスタイルだ。おそらくこのときもそのやり方を押し通したはずだ。ゆえにセッション録音といっても、この音盤はほとんどライブの感覚で聴くべきだろう。そもそも、マルタの演奏は「どんなときでもライブ」だ。収録は1965年6月23、24、27日に、ロンドンのアビー・ロードのNo.1スタジオでおこなわれた。同年の3月にワルシャワで開催されたショパン・コンクールで優勝して3ヶ月後ということになる。当時、あのコンクールの開催時期は10月(現在)ではなく3月だった。優勝時は23歳。アルゲリッチはEMIの熱意にほだされてこの録音をすることに同意したが、何年かまえにいったんドイツ・グラモフォンと契約を結んでいた関係上、この録音は35年の長きにわたって死蔵されることとなる。
こうして聴いてみると、どの1曲をとっても言葉を失うほどの輝きに満ちている。ショパン・コンクール・ライヴ盤にも、そしてその2年後にグラモフォンからリリースされたショパン・アルバムにも収録されておらず、ここでしか聴けない曲がある。夜想曲第4番だ。彼女が紡ぎだすこの小品の3分35秒の宇宙をぜひ味わっていただきたい。