ピースメイカーズ〈上〉―1919年パリ講話会議の群像
このすばらしい本に日本語訳の出たことを歓迎する。
表題の「ピースメイカーズ」は、その名のとおり、
第一次大戦後の和を講じ、あわせて国際連盟の創設を
論じたのであるから、まさに字義どおり。
しかし皮肉なことに、というか当然かもしれないが、
まさにパリ会議が第二次大戦の出発点であることも
本書を読んで確信した。
太平洋と日本に関して読むならば、
委任統治は重要であると思った。
ところが一章を読みとおしても、読後感がはっきりしない。
試みに原著と対照してみて、原因が判明した。
訳が正確とは言いがたいのである。
たとえば、アメリカが領土割譲に反対しているのに、
「イギリスは、
ドイツや他のどこかを大英帝国の領土に加えるなどといったら、
アメリカ人を敵に回して何の得にもならないと・・・」
そりゃ、ベルリンが大英帝国領になったら、世界中で
びっくりするだろう。
原著には「ジェーマン・テリトリーズ」とある。
たとえばニューギニア、ソロモン諸島、サモア、
たとえば独領東アフリカなどである。
ここまで読んでようやく納得できた。
なーんだ。
わかってしまえば、たいした話じゃないが、やはりこれは誤訳だろう。
訳書の出現に感謝しつつも、
英文も対照しながら読むと、
2倍も3倍も豊かな内容であることを実感した。