新宿警察I (双葉文庫)
40年以上前の作品ですので、表現が古い部分はありますが読み応えは十分、
テーマそのものは今の時代にも十分通用する内容です。
警察機構そのものに変化がないということなのでしょうね。
今野敏さんの安積班シリーズがお好きな方は、楽しめること間違いなし。
復刊されず長らく埋れていた人のことですが、非常にもったいない話です。
出会えたことに感謝。
泥だらけの純情 [DVD]
この映画の中では、吉永小百合は、エリート外交官の令嬢、真美を演じ、一方、
相手役の浜田光夫は、塚田組のチンピラヤクザ、次郎を演じている。
2人の住む世界には、天と地の開きがあるが、ある日、町で不良に囲まれて困っている真美(吉永)を次郎(浜田)が助けることから、2人の付き合いが始まる。
2人の住む世界には、天と地の差があるが、どちらの世界にも共通しているのは、
人を愛する自由がないということである。
ある日、真美は、外交官の父のいるアルジェリアに行かなければならなくなり、
次郎は、刑務所に入らなければならなくなる。
2人は、お互いの世界の鎖を断ち切って、愛の逃避行を決意する。信州の雪の中での
ラストシーンは、とても感動的である。白銀の世界が、二人の純粋な愛の世界を象徴
しているかのようである。
この映画には、国際性もあると思う。この映画に英語の字幕をつければ「ヤクザ」の
世界を知りたい外国人にとても喜ばれると思われる。ヤクザが類似家族を営んで、親分が子分の面倒を見たりしていることや、チンピラ次郎の憎めない性格や真美との
純粋な愛は、外国人の観客の心にも伝わるだろうと思う。
馬鹿まるだし [DVD]
山田洋次は渥美清と組む前はクレージー・キャッツのリーダー=ハナ肇と組んで喜劇を作っていた。もちろん山田は東大卒とはいえ無名のひら監督。ハナは工学院大学と学歴こそ劣るが山田など足元にも及ばないスーパー・スター。ハナが山田を使っていたのである。逆ではない。ハナは柄が悪いが親分肌の面倒見のよい男で「山田というのは優秀な監督です」とふれあるいたという。渥美と組んで一発当ててから山田が「偉くなり」挨拶にもこないのでハナは面白くなかったそうだ。はっきりいって「男はつらいよ」より「馬鹿まるだし」のほうが遥かに面白い。ハナと渥美のキャラクターの違いで。さて?フランス期待のイケメンで大金持ち(宝石商。カルティエ創業にも関与)の御曹司=F1レーサー。フランソア・セベール(ユダヤ系フランス人だが美男子で筋肉マン)はBBの恋人。実家からバケツ一杯のダイアを惜しげもなくプレゼントは嘘。宝石箱一杯か。しかし1973年10月ワトキンスグレン(NY近郊)のアメリカGPで惨死(体が真っ二つに裂けた)チーム・メイトで師匠のJ・スティュワート(スコツトランド。この年チャンプ)は衝撃を受け引退。二度とサーキットには出なかった。しかし恋人のバルドー自伝で「フランソワは馬鹿まるだし。もううんざりした」あちやー。死ねば恋人であれ奥さんであれなに言われるか。私死んだら則子さん「和田君、馬鹿まるだし。用心棒とパシリだけの人でした。私の腕に触ったりして嫌だわ」かな?
秋津温泉 [DVD]
岡田万茉莉子映画出演100本目を記念して自ら企画を立てた作品だけあって、まさにこれは岡田さんの代表作と言っていいでしょう。 あの数々の和服姿の艶やかさといったら言葉になりません。 また映画全盛期の撮影所の底力で、1カット1カットが絵画のよう(あの舞い散る桜の花びらは小道具なのでしょう)に綺麗に撮られています。 デジタルリマスターで蘇ったこの作品、ケースのカバーの美しさも含めてDVD商品のお手本のような品です。
他のレヴュアーの方が仰っている通り、“映画でもって映画以外のことを語る”吉田監督作品の中にあって、これは唯一の情緒てんめんたるラブストーリー。 しかし、戦争という極限状態でのみ真に生を実感でき、戦後の平凡な生活の中に意味を見出せない人々−というのはやはりちょっと観念的な話です。 私はこの映画、理解はできますが話的にはあまり好きではありません。 まったく個人的な好みを言って恐縮ですが、どうも主人公周吉のように、死ぬ死ぬと言って実際には死なない文学者くずれーというキャラがあまり好きではないのです。 もっとも長門宏之はそういうタイプの男を上手く演じていて、それはそれでいいのですが。 ラストのバス停での新子とのやりとりなど、真剣なような滑稽なような小ずるいようなーで、確かに人間とはそんなものだ、というリアリティがあります。 ある意味でこれは吉田喜重版“浮雲”でしょう。 ただこの映画のヒロインは“浮雲”のヒロイン以上の情念の炎をラストで見せてくれます。 “浮雲”系列の作品がお好きな方にとってはこれは必見の名作でお薦めできます。
馬鹿まるだし [DVD]
「馬鹿が戦車でやってくる」と同様の細かい笑いとドタバタ劇に期待をしたのですが、どちらも今ひとつ。観ていて期待外れ感がヒシヒシと込み上げて来ました。結局期待した様な所はほとんど無く観終わってしまったものの、主人公の口癖が印象に残りました。それが「男と見込まれちゃこの安五郎、断るわけにゃまいりません。」というものです。主人公の安五郎は腕っ節の強い男ですが、不器用で、普段は相手にされないのに近所の人が困ったときにいい様に使われてしまうのです。ダイナマイトを持った暴漢に娘をさらわれた村人が例によって安五郎のところに、娘を助けてくれと頼みにきます。今度ばかりは死んでしまうかもしれない様な事態ですが、それでも例の口癖を発して助けに行こうとします。そのに、安五郎がひそかに思いを寄せるお寺の娘が来て安五郎に「馬鹿っ!」と言って引きとめようとするのですが、やっぱり安五郎は例の口癖とともに言ってしまいます。結果は死にこそしなかったものの大怪我をしてしまいます。このお寺の娘とも上手くいかず、なんともせつない話なのですが、その頼まれると断れない主人公の姿勢が、「そんな馬鹿な男がいてもいいんじゃ無いか」という山田洋次監督のメッセージだったのでは無いかと思います。そう考えると日頃の自分と比較して、自分のセコさが目立ってしまいます。上手に立ち回って生きるよりも、馬鹿にされても人の役に立てる人でいられるようになろうと思える作品でした。この作品「男はつらいよ」につながったそうです。言われてみればそんな香りもしたような気がします。