ドビュッシー:前奏曲集 第1巻、映像第1集、第2集
まるで鳥の羽で軽く触れられるような感触。「亜麻色の髪の乙女」。
和音の響かせ方、間の取り方、テンポの設定、タッチの選択、
そして彼の透明感あふれる音色。
どれが変わってもこの曲の印象は変わってしまうだろうという
ぎりぎりのバランスを持っている。そう作られている。
これこそ、感覚と思考が同一地平にある世界だ。
他のどの曲についてもそれは言える。
では、神経質でピリピリしているのか?それは感じない。
曲に対する愛情が伝わってくる。ドビュッシーにしかない
詩情を尊敬している。そんな感じすらする。
ドビュッシーの描こうとした幻想あふれる情景や夢を、
ミケランジェリほどに再現できた演奏家は希有だったと思う。
コルトーやギーゼキングや、フランソワを知っていても。
(最晩年のアラウは凄いので別格扱い)
ミケランジェリの演奏は、硬質で透明で、あたかも
クリスタルで出来ているかのようだ。
しかし、そのクリスタルは奧に炎を秘めている。
それが、僕を引きつけて放さない力の源泉だ。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番&第5番
レコード時代から幾多の有名ピアニストが有名指揮者と有名オケにより録音を重ねてきた名盤の多い曲の一つです。バックハウス、リヒテル、フィッシャー・・・そしてミケランジェロ良いですね。しかもライブ録音であり緊張感が漂うなかジュリーにと作り出す音楽は熱気に満ち溢れ名盤中の名盤だと言っても可笑しくはないと思います、お勧めの一枚です。
ラヴェル:ピアノ協奏曲 ト長調、ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第4番
今から半世紀以上前の録音(1957年3月)ですが、ミケランジェリの燦然ときらめくピアノの音がしっかりと刻印されていて、聴きごたえ十分のCD。とにかく、水晶のような透明感があって、キラキラ光るピアノの響きが美しく、陶然とさせられました。
初演がわずか一ヶ月しか違わない両協奏曲(ラヴェルの『ト長調』が、1932年1月14日。ラフマニノフの『4番』が、1931年12月8日)。ファンタジックな曲の魅力と相俟って、ミケランジェリのピアノの音にくらくらさせられたラヴェルのコンチェルトが絶品だったなあ。格別、第2楽章のころころと転がり、滑るように下降していくピアノが描くライン(線)、これがもう、うっとりするくらい魅惑的でした。
ラフマニノフのコンチェルトも、同じ作曲家の名品『第2番』並びに『第3番』と比べると聴き劣りがしますが、でも、ミケランジェリのブリリアントなピアノの響きは、ここでも素晴らしかった。この時代、よくぞこれだけのピアノの音が録音できたなあと、そのことにも驚かされましたね。
ピアノの美しい音、美しい響きを堪能したい方におすすめの一枚。