ザ・ギャラリー
スウェーデンはイエテボリ出身メロディック・デス・メタル界の重鎮による1995年発表2nd。
90年代中盤、メロディック・デスの興勢期。本当に多種多様なバンドが登場し、その多彩さは1バンド1ジャンルと私が勝手に思っているほど(笑)
そんな状況の中、デス・メタル由来のスピードや攻撃性に冷ややかなピアノを配し、北欧の冬の街並みを思わせるゴシック要素を強く打ち出しているのが、このDark tranquillity。
といっても当時はまだキーボード奏者は加入しておらず、その鍵盤の音は恐らくゲスト奏者かプロデューサーによるものが僅かに聴かれる程度。
しかし、そのぶんツイン・ギターによる慟哭の旋律とハーモニー、そしてシーン随一と言われる“天使のデス声”ミカエルの美声を存分に堪能できる。
#1“Punish my heaven”をはじめ、他にも#3“Edenspring”#8“Lethe”など、心をえぐられるような攻撃性と疾走感、そして悲哀と美しさを併せ持つ名曲多し。
このアルバムで彼らは、地元スウェーデンのみならず、地球の反対側のここ日本においてもバンドの存在と人気を決定付けた。
速さと美しさとを兼ね備えた、メロデス史に残る名盤。
Exposures: In Retrospect & Denial
Disc.1に関しては、正にベストアルバムと言って良い。ただ、六枚でているアルバムの内、四枚のものまでしか収録されていないことがネックだろうか。しかし、このバンドの時期的な変遷は全てカバーしている。デスヴォイス全開なものから、驚くほど綺麗な曲まで、一喜一憂しながら聞くことができた。
Disc.2は、クラクフ(ポーランド)でのライブの際に収録されたものを中心に、DVD(「ライヴダメージ」)をあくまで音の面から補完しているようだ。当然、生音なので、かなり燃える。ただ、とにかく詰めこみました! という感が強いのは少しいただけない。もう少し曲間の繋がりの部分を、他の楽曲を削ってでも、収録しても良かったのではないだろうか。
全体としては、記念盤ということもあり、細かいことを気にせず――むしろその細かい部分すら楽しんで――聞きこめる内容だった。
Fiction
北欧メロデス界の三傑、Dark Tranquillity渾身の8th。
このメロデスというジャンル、At the Gates『Slaughter of the Soul』の男泣きデスラッシュ、Arch Enemy『Burning Bridges』の暴虐:泣きメロの黄金比、In Flamesのメタルコア的アプローチ、Children Of Bodomのキラキラネオクラシカルのあとには、もう進化することはないように思われた。
が、しかし!三傑の一角、Dark Tranquillityはそのいずれにも作りえないであろう新たな完成形をここで作り上げた!
作風は6th、7thの延長線上にあたるが、楽曲のバリエーションが多彩なため、まさに1st〜7thまでの総括といった感じ。
重鎮の始動に相応しい貫禄を放つ『1.Nothing To No One』。
DTのお家芸炸裂の『3.Terminus』、『9.Focus Shift』。
極寒に震える邪悪な心を体現するかのような『6.Inside The Particle Storm』。
ゴシックな雰囲気とKeyの澄んだ空気感が素晴らしい『8.Misery's Crown』。
黎明期から現在まで弛まぬ努力を続けてきたからこそ産まれたであろう、メロデス史に燦然と輝く名曲『7.Empty Me』。
全てがドラマッチック、全てが説明し切れないほどの感動クオリティ。
暴虐の渦の中、ほのかに漂う退廃美。
都会的な冷たさに包まれながらも、どこか胸を熱くさせる美旋律。
聴き手を音の世界に誘う、快楽にも近い心地良さ。
メロデス愛に溢れた、語る術などない至高のメロディックデスメタルアルバム。
Damage Done (Reis) (Dlx)
スウェーデンのメロデスバンド、ダーク・トランキュリティの6th。2002作
このころ、「projector」、「HAVEN」と個人的には煮え切らないアルバムが続き、
ダートラはもう終わりだと思っていたが、彼らはどっこい生きていたのであった。
本作はその前2作の流れを汲みつつも、演奏にはアグレッシブな硬質感が増し、
メロデス的なツインギターの煽情メロディを乗せて疾走する。
かつてよりはややモダンになったが、まさにダートラ復活ののろしである。
適度にシンセを取り入れたアレンジで、メランコリックな質感をともないながら
重厚かつドラマティックに聴かせる。これが次作「CHARACTER」へと続くのである。