覇王の番人(下) (講談社文庫)
明智光秀とそれに仕える忍の小平太を中心に置いた戦国物語の下巻。上巻がなかなか読み進めなかったのものの,その忍の描写において今での作者の本と同様の面白さがあり,下巻が楽しみであったのであるが,多少期待はずれであった。確かに本能寺の変などにおいての歴史上の事実に関しては作者のフィクションを取り入れるのは難しいのであろうが,せっかく盛り上げてきたのだから,帯においてもあおっている信長との本能寺における作者なりの想像の世界をもっと濃密に描いてほしかった。それを楽しみに読み進めてきたのだから・・・しかし,歴史は勝者によって描かれていくの言葉の元に,作者が戦国時代を終わられた真の武将と確信する明智光秀の印象を変えられてしまった物語ではあった。
アンダルシア 女神の報復 プレミアム・エディション [Blu-ray]
話は”スペイン”で発見された日本人投資家の遺体を調べるため
特命を受けた外交官”黒田康作”が調査に乗り出すというもの。
外交官である黒田は司法の力による問題処理を選択することはできないが、
彼の外交手腕により”更なる”犯罪犠牲者を産み出すことのないよう道筋をつけるべく
活躍する。
犯罪者の苦悩を背負いながらも問題の解決に向かう黒田の行動はあまりに凛々しく
切ないが、切なるストーリーは見る人の記憶に残り続けるのも事実。
次回作も是非期待して待ちたい。
尚、特典のメイキングDVDにはスペインロケをドキュメントに追った映像が
1時間30分程度入っているが、キレイなスペインの景色を堪能できるのはもちろん
「織田、福山、伊藤英明」の豪華な三人が談笑している様子なども多く含まれていて
ファンにはたまらないものだと思う。
映画「アンダルシア」の世界観をより深く楽しませてくれるマストアイテムだ。
(以下個人的感想)
監督は「西谷弘」。物語はスペインの”冬”を背景に物語は進行していくが、冬から
連想される寒さや厳しさというイメージ以上に、白い無常感や透明感を表現する監督の
センスを存分に堪能できるのも本作の魅力だろう。
今後は「冬をあますことなく表現できる日本人は誰か?」と問われたら
ド●カムの次くらいに西谷弘の名前を出したいところだ。
そして他人の運命を業として背負う男、外交官”黒田康作”を演じるは、
今なお日本の演劇界の一線で活躍する「織田裕二」
声量はあっても決して役者向きとは思えない彼の篭り声は発したセリフが残り、
後から出たセリフと反響しているかのような耳残り感がある。
散漫な発音は抑揚のなさに繋がり”現代劇しかできない織田”と揶揄され一部に、
演技力のないアクターだと囁かれていたことはファンの人達も決して無視できない
一つの意見だろう。
しかし今作”アンダルシア女神の報復”(前作も良いけど)の主人公「黒田康作」の
役はそんな”織田裕二”の俳優としての特徴をそのまま人物化したかのようなハマリ役だ。
彼はやはり”東京”でも”踊る”でもなかった。黒田康作が演じるは織田裕二なのだ。
残念なのは今回の映画でひとまず黒田シリーズは最後とのこと。
しかし無理は承知で!是非三作目も見たいよ!
みんなでDVDを買おう!
ホワイトアウト [DVD]
『ホワイトアウト』は親友との約束を頑固に守ろうとする「誠実」さを主演の織田祐二が好演していると思う。主人公の心情を中村嘉葎雄扮する警察署長が代弁する場面が印象に残る。
「ホワイトアウト」とは、登山用語で、濃霧や吹雪によって方向感覚を失うこと。原作では3回現れ,その度に主人公富樫は成長していく。映画では,真保裕一もシナリオに参加しているのにまったくこの点に力点が置かれてないのが残念。だから4つ星。
小説は長編の大作で、映画化すればストーリーをどうしても省かなければならない運命にある。だからこそ、原作を読んでから是非見てほしい。
ホワイトアウト [DVD]
それなりに楽しめます。でもどうしても凄すぎる原作と比較しちゃうのは仕方が無い。タイトルの「ホワイトアウト」、大自然が生み出す圧倒的な雪の恐怖が今一伝わってきません。それから原作を読んでいないと登場人物の内面が全然判らないのでは無いかな。(特に松島奈々子と吹越満のキャラ)決定的なのはラスト近く、主人公が現実と亡き親友の救援を混同するシークエンス。彼の超人的な活躍の源になっていた親友への贖罪の気持ちがまさにピークに達したシーンで、原作を読んだときは恥ずかしながらボロボロ落涙しました。映画ではそこまでぐっとこれませんでした。(中村嘉津雄の好演でだいぶ救われましたが)原作は読んでいない方は、是非ご一読を!
ホワイトアウト (新潮文庫)
映画は観ていないので、DVDを衝動買いしたくなりました。
読み始めから引き込まれる、文章力に脱帽です。
緻密に考えられた脚本、他に必要なものは何もありません。
少し頁数の多い文庫ですが、リズムが良いので読み始めると止められません。
富樫は、ダムの運転員。仲間と遭難者を救う場面から始まります。
ホワイトアウトの表題に相応しい雪山の場面から
武装グループが占拠するまでの息もつかせぬ展開は
本当に冒険小説の域を超えています。
そして432-433頁、今までの小説でも、たくさん涙腺が緩みましたけど
こんなに質の違う涙が止まらなくなったのは、初めての経験です。
上司の清水課長からの伝言「君は日本一のダムの運転員だ」
この一言が、この小説のクライマックスだと思います。
そしてラストシーン、この涙が乾いた頃に、また静かに泣けるんです。
真保さんの奇跡の人も、読んでみたくなりました。