プロ法律家のクレーマー対応術 (PHP新書 522)
この本の良い所は,具体的な事例を検証しながら,わかりやすく,どのように対応してよいかを解説しています。クレーマーへの対応により,心の病を発症する場合も今後は確実に増えていくと考えられるにもかかわらず,対応は進んでいないことへ著者は警鐘を鳴らしています。他人事ではないクレーマー対策に関して考えるきっかけとなる良書です。
極北ラプソディ
破綻した自治体の市民病院と、そのとなりながら先見性があり
ドクターヘリなど導入している対照的な自治体の救急医療を題材にした小説
作者の海道さんは、医療関係の小説を多く書かれる方で、
医師として自分の専門である死後医療関連が多い方です。
この小説は、自治体の破綻と、悪意と過失が無い
医療訴訟のダブルパンチにより崩壊した市民病院
極北クレーマーの続編です。
あらすじは、その後の市民病院、訪問看護の看護婦2人と
医師2人、そしてたった一人の事務員と大規模縮小した
状況から小説ははじまります。
救急医療は隣の市まかせ、薬はなるべく出さないようにするなど
ちょっと見、医者が患者を選り好みしている状況に陥っています。
対照的に救急医療を受け入れている自治体は、ドクターヘリの
導入など先進的な医療体制をとっています。
話は3つの出来事からなりたっています。
第一部で扱っている治療費未払いをしつづけている患者が治療を
受けずに帰りすがら死亡した出来事。
これはメディアに診療拒否のために死亡したととられ極北クレーマーと
同じようなメディア対医療の戦いが繰り広げられます。
第二部でドクターヘリの紹介と良い点を述べた後、第三部で
ドクターヘリの盲点、有視界飛行が基本になるため「規制の枠」を
超えた救援活動のすこし悲しい後始末のお話。
そして第四部で、医師とはどのようであるべきなのかという
投げかけの回答の一つのような離島の出来事で構成されています。
この作者の少し残念な所は、袋小路の様な現状の矛盾に
対し、悲しいまでの理想だけを投げかけて終わる小説が多い中
これはめずらしく、具体性のある回答で終わっており
とても温かさを感じる作品になっています。
チームバチスタのような荒唐無稽なキャラクターではなく
北の大地らしい素朴なキャラクター使いは私にはとても
好感をもって読み進めることができました。
少し盛り上がり感が薄い感じもありますが、「地の塩」
としての医療を感じる良い作品だと思います。お勧めです。