Culture of Ascent
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの9th。2007作
1993年のデビューから一貫して幻想的で壮大なシンフォニックサウンドを
つくり続けてきたこのバンド、今やアメリカ最高のシンフォバンドの地位を築き
前作ではロジャー・ディーンによるジャケとともにCD2枚組の大作を完成させた。
それに続く本作も、バンドの円熟さらなる探究心を感じさせる力作に仕上がっている。
曲ごとに男女Voをそれぞれをフロントにして、巧みなシンセワークと、山あり谷ありの
ドラマティックな構成で9分、9分、7分、16分、19分という長曲を飽きさせずに聴かせる。
ヴァイオリン、チェロなどの生のストリングスは説得力のある優雅さをサウンドにもたらし、
古くささのないモダンな重奏アレンジとともに、たんなるプログレ、シンフォというよりも、
もっと普遍性のある美しきドラマティックロックにまで昇華されたという印象だ。
ジョン・アンダースンのゲスト参加という話題性もあるが、それはただの要素にすぎない。
ゆるやかなる音の洪水に心地よく飲み込まれてゆける、これは素晴らしい傑作である。
If
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの2010年作
1993年のデビューから濃密かつ幻想的なシンフォニックロックを作り続けてきた
アメリカを代表するシンフォ系バンド。前作は女性Voをメインにした作風であったが、
今作では再び以前のYESタイプの路線に戻っている。レトロな雰囲気を感じさせるシンセワークに
キャッチーなヴォーカルメロディで、耳触りのやわらかなシンフォニックロックが楽しめる。
10分超が2曲に、ラストは24分の大曲という力作であるが、濃密すぎない爽やかさがよろしい。
Glass Hammer
複雑なプロットと凝った設定を、さらに仕掛けをほどこした語りで綴る、現代SFの傑作。
二重三重の入れ子構造を持ったスタイルによって時系列がバラバラに再構成されてストーリーが展開する。と書くと読みにくそう、分りにくそう、ということになるのだが、一つヒントを教えると映像関係の用語を理解していると混乱はしないハズ。
現代SFの例にならって明らさまな説明というものされない。作中に出てくる新興宗教の教義や儀式なども最初はよく分らないのだが、チラリチラリと言及される事物を読み解きながらページをめくっていくと、世界と物語がずしりとした手応えを持って現れてくる。そういう意味では速読を許さない。
暗い物語の中で一ヶ所、光にあふれたシーンがあって、そのシーンの穏やかな詩情は忘れられない。作品全体でみてもこのシーンは文字通りのハイライトを示している。
一つ、これは言っても仕方がないが、作中では再生メディアとしてビデオが使われていて、これが今読むと時代を感じさせてしまう。瑣末なことだが、白ける人は白けるかも。
二読三読を要求する、ジーターの才気と野心がほとばしる最高傑作。どこかで見かけた折には迷わず入手すること。
Shadowlands
アメリカのシンフォニックロックバンド、グラス・ハマーの7th。2004作
王道のシンフォバンドとしては恐らく現在アメリカ最高のバンドといってよいと思う。
4th「CHRONOMETREE」において、コテコテの濃密引き倒しシンフォでマニアを唸らせ、かと思えば
続く5th「THE MIDDLE EARTH ALBUM」では中世風トラッドアルバムに挑戦、とやりたいことをやっている。
今作「SHADOWLANDS」は、濃密なシンフォ路線と軽快なメロディアス性が融合されたサウンドで、
なにに近いかといえばやはり「危機」の頃のYESといっていいかと思う。
わざわざ生音にこだわり本物のパイプオルガンを使用したり、ストリングスも生音というこだわりようで、
大変力が入っていながら、さりとてヤボったくなりすぎず、ある意味上手く力が抜けた爽快さが音にある。
Cor Cordium
いやー、すげーです。ジョン・デイヴィソン。この人イエスの伝説のボーカリストである
ジョン・アンダーソンの生き霊なんだよきっと。そんぐらい似てます。ボーカリストとして
正規の訓練は受けていない人らしいから、真似して歌っている内に、癖が移っちゃったん
だろうなぁ。イエスのフォロアーは沢山いたけど大抵はボーカルに難があった。このバンド
は、その点は大丈夫です。というか本家イエスのボーカルに代役で参加したぐらい。
他のメンバーもかなりがんばっていると思う。超絶テクニックで変拍子、高速プレイ。という
展開には中々ならないけど、リズムセクションが安定しているから安心して聴けます。
それにクリス・スクワイヤ風ベースとかキングクリムゾンのロバート・フィリップ風ギター
とかELPのキース・エマーソン風キーボードとか。ドラムは普通かな。いわゆる黄金期の
プログレッシブロックと呼ばれた音楽のおいしいとこ取りのアルバムに仕上がっています。