舶来屋 (新潮文庫)
ストーリー自体は実在の人物である茂登山長市郎氏の実話に基づいているので非
常に面白い。
が、話の展開が子供向けの科学書然とした太郎と花子と博士の質疑応答の様な形
態で進んで行くのにはちょっと閉口した。
経済小説を多数、著している作者だけ有り、戦中、戦後から高度成長期、バブ
ル、そして現在とその時々の経済の状況や貨幣価値などに触れているのは物語の
定量的な理解の一助になっている。
読了後の率直な感想として、茂登山氏の重量感のある半生を「舶来屋」という物
語としてきちんと昇華出来たのか、脚色の塩梅とノンフィクションの狭間で揺れ
る作者の葛藤を行間に垣間見たような気がした。
cc: カーボンコピー (中公文庫)
生損保業界の不払い問題をベースとした広告営業者をめぐる小説。
PC活用の時代に簡単にメールでCC:することで大量に意思伝達をすることができる反面、本当の意思疎通の大切さを改めて考えさせられる。
ランウェイ
ファッション業界の一面を知ることができたが、ここまで人の出会いに恵まれ成功するのは出来すぎの感がある。ファッション業界を題材にし、著者が言い事は、自分の目標や生き方を明確にし、勇気を持って取り組み事で自分を取り巻く環境に幸運を呼び込む事ができるという信念ではないでしょうか。自分のやりたい事も明確にできず、困難な事に挑戦する意欲にも弱い若い世代への気合を入れる小説の様に感じながら読みました。
財務省の階段
ホラーだと聞いていたので、夕方に読み始めた時は、途中でやめるつもりでいました。
ところが、夕食後また本を手に取ると、止まらなくなってしまいました。
各章を読み終える度に、ゾクゾクしてしまうのですが、主人公達の一生懸命に生きる姿勢に、思わず引き込まれてしまいました。
幸田さんの今までの作品とは、違った一面を見てしまいました。面白かった〜
日本国債 オリジナル版〈上〉 (小学館文庫)
市場操作という倫理性に欠ける部分を肯定しているところもありますが、国債の仕組み(それぞれの立場でのここは「買い」か「売り」か)など勉強になりました。
さらに文庫本発行時には、単行本の発行の時期と状況がかなり異なっていたため、大幅に書き換えたと「あとがき」でいいます。それが読んでいて、違和感なくのめり込める理由だと思います。
エピローグの最後のページではうっすらと、「うんうん」と涙すら出た次第です。
日本国債は薄氷の上にずんずんと積り続けている実態、そしてそれを是正するための一つの方法を示してくれています。