サテュリコン―古代ローマの諷刺小説 (岩波文庫)
今も昔も変わらない好き者で有名なローマ人の、これは古代ローマのあの時のエロ話であるが、こりゃなかなか奇妙なお話で、我らがヒーロー・エンコルピオスと恋敵アスキュルトス、恋の三角関係の対象となった美少年ギトンの武勇伝である。はてはまた行き交う亡者どもとの恋話であったり、詩作狂いの道すがらであったりといろいろあるが、所詮は、三者三様・他者多様のエロ街道話である。
訳者の解説に個々の人名の日本語訳なるものが書かれていてこれがなかなかのもので、読んでいておもしろい、おもしろい。エンコルピオスは「抱かれる人」、巨大な一物を持つアスキュルトスは「決してへこたれない人」、ギトンちゃんは「隣人」。
まだまだある。解放奴隷で宴会部長のトリマルキオンはセム語で「三度祝福された人」。好色な老詩人エウモルポスは「甘く歌う人」。淫売夫人トリュパイナは「贅沢に暮らす女」。
過激な濡れ場シーンはなかなか出てこないが、最終場面に近い上流階級のご婦人キルケとの絡み場面は凄い。張り切りすぎて神々を侮辱してしまったエンコルピオスは、嗚呼、何たること、不能にされちまう!
これからの取り巻き連中の逸物回復作業がこれまた涙ぐましい。あれやれ、これやれで、勃起回復、嬉しいなったら、うれしいなって感じで、世は事もなく、ローマの宵は今宵またまた更けてゆく・・・・・
(エウモルポスの長編詩歌「内乱詠歌」は塩野七生女史のあの「ローマ人」のカエサル部分の参考になる・・・・・)
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フェリー二です。奇抜です。醜いです。しかし圧倒されます。
古代ローマを舞台にエンコルピオという青年の冒険を通して描かれる、赤裸々な欲望と肉欲と奔放と空しさの絵巻。どこからともなく湧き出てくる快楽を求める人々のデカダンス炸裂の描写が凄まじい。インドのバラモン教的絵画、バリ島の伝統舞踊ケチャックダンスの合唱、古代西アジア的儀礼、アフリカの民族音楽の使用など、西欧文化にこだわらず古代的なものや前近代的なものをすべてミックスした異郷の香りふんぷんたる雰囲気作りとそれにまつわる創意工夫が面白い。
ビスタサイズの大画面をあますところなく使いきり、それぞれのシーンが完璧にフレーミングされている画面構成はどこを切り取っても絵画的に完成度が高いところはさすが映像の申し子フェリーニ。また、随所に配された、太りきった人々、ならびに身体的な特徴が際立った人々の登場がフェリーニが愛した人の世の多様性をいやがうえでもかもし出し、これが作家の映画であることをことさら強調します。
あえて難を言えば、演技に特筆すべきところが無かったこと、全体のストーリーにもう少しなめらかな連動性がほしかったところが挙げられるでしょうか。こうしたあたりが強化されていればさらに優れた作家的抒事詩に成りえたのではないかと思える作品です。
演技の巧みさやストーリーを堪能するのではなく、あふれ出てくるエネルギーを浴び、映像の魔術に圧倒される作品としては記憶に残る一本です。
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イマイチではないのでしょうか。
お気に入りの「サテュリコン」が映像化されているらしいと最近知り購入したのですが、うーん…。
原作があるものが映像化されると往々にして何かしら不満が出てくるものですが、これは特にがっかりが多かったです。
※特にギトン(映画ではジトーネ)がアスキュルトス(アシルト)についていったっきりエンコルピウス(エンコルピオ)の元に戻らなかったところが残念。
これはもう「サテリコン」という新たな一つの作品だと思ってみたほうがいいですね。 そう見ると映像と音楽はなかなか目を楽しませてくれます。特に秀逸なのは神の子!人間とは思えない美しさと不気味さを兼ね備えた子です。この子を見る為に買ったんだと思うなら惜しくはありません。
しかし総合評価としては☆3です。
Nemesis Divina
ノルウェーのブラックメタルバンド、サテリコンの3rd。1997作
1stの時点では、ややB級臭い土着的でプリミティブなサウンドであったが、
本作では音の力強さとともに、ドラマティックな質感と説得力を増している。
基本は激烈に疾走するスタイルながら、曲における緩急のつけ方や
挿入されるメロディアスなフレーズなども効果的で、暴虐なだけでないセンスを感じさせる。
真性ブラックメタルとしての邪悪さを保ちながら、質の高さもともなった希有な作品だ。
4th以降はややドライで硬質な作風へと変化してゆくが、メロディックブラックとしては本作が最高。
レベル・エクストラヴァガンザ
サティアー(vo,g,b,key) フロスト(dr)
ノルウェー出身ブラックメタル・バンド、1999年4th。
サティアーの呪詛ヴォーカル、フロストの鬼ブラストも相変わらず壮絶だが、ミディアムテンポの曲やパートの比率も多く、疾走パートと良い対比を成している。
このアルバムは6分〜10分台と長尺の曲が並ぶが、彼らの曲は何というか、音の一つ一つに殺気がこもっており、途中でダレることがない。
淡々とした無感情でシンプルな8ビートと、メロディアスな要素を極限まで排した、殺伐としたギターリフの相乗効果によって生み出される独特の雰囲気には、ぐっと引き込まれるものがある。
今にも獲物に襲い掛からんとする飢えた野犬のような、暴発寸前の凶暴性が色濃く表れているアルバム。