Jack Orion
オリジナル・アレンジのトラディショナルから始まるアルバム。とにかく最初の2つのインストゥルメンタル・トラックが死ぬほどかっこいい『Jack Orion』。軽快で鮮やかな音色、森を抜けていく風のような透明感と爽やかさが最高です。とくに2曲めのやさしいメロディでは、朝のイメージが浮かぶような清々しい繊細さの中でも、だからといってけっして脆弱に傾くことのない力強いセンスが光っています。いつもながら輪郭のくっきりとしたソリッドなギターが素晴らしくて、とにかく一点の曇りもない響き。ジャケットも渋くてそこはかとなく冴えた印象で、なんだかちょっと落ちついてコーヒーでも飲もうという気分になります。
Bert and John
彼らのギターのサウンドは私たちの耳には如何にも英国的に響く。それは彼らの音楽が、ブルースやジャズ、クラシック等の流れを汲んで生まれてきたのではなく、英国の風土、文化、歴史に培われて生まれてきたからだ。
彼らのギター・テクニックについてもまた然りで、既製の奏法では括ることのできない、やはり英国的な独創性が見られる。それは英国独自に発達した至芸とも言えるもので、彼らの先達としては、あのデイヴィー・グレアムがいる。ポール・サイモンはそのグレアムの「アンジー」を弾き、英国的独創性をアメリカへ持ち帰った。
このアルバムは、その「ギターの英国的独創性」がデュエットの形で存分に楽しめるものだ。バートもジョンも英国フォーク界が生んだ天才ギタリストで、信じ難いほど技巧的な演奏をする。その二人が、それぞれの独創性を息の合ったプレイで惜しみなく披露している。彼らの気品ある流麗な演奏を篤と聴いてほしい。そしてもしアコースティック・ギターを弾く人であるなら、フィンガー・ピッキング・スタイルでデュエットする醍醐味をこのアルバムで味わってほしい。
これは蛇足になるけれども、このアルバムを聴いてギターをコピーしたいと思う人もいるかもしれないので、その手始めとなるよう少々解説しておくと、1曲目の "East Wind" でのバートのチューニングはDGDGADで、カポは2フレット(カポを2フレットにすると若干高めになるので、曲に合わせて全弦少し下げる)。そして先ずペース音で5弦解放を弾き、続いて高音部の3弦解放+2弦5フレット+1弦解放を弾く。次はベース音が4弦解放、6弦解放と連続する。そしてベース音に高音を加えて6弦3フレット+4弦解放+3弦解放+2弦3フレット。最後に1弦解放、1弦1フレットと弾く。あとはほとんどこのフレーズの繰り返しである。一方、この曲に魅力的な旋律を加えているジョンの
Bert Jansch
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