義経千本桜 (橋本治・岡田嘉夫の歌舞伎絵巻(2))
かつて、新書館から「ワーグナー・ペーパーオペラ」と銘打ったシリーズが出版された。ワーグナーの「ニーベルングの指環」の活字・イラスト本だ。
実際の上演を見る機会がなかなか得られない、たとえば辺境に住み、かつ貧乏なわたしのような者には、音を頼りに空想するしかない。それも悪くはないだろうが、ストーリーも楽しみたいもの。ヴィジュアルも味わいたいもの。
当書はプロットを把握できるばかりでなく、文学として鑑賞に耐えられる作品を目指したものだった。
その、歌舞伎ヴァージョンが本書だ。ペーパーオペラでは、イラストが天野喜孝、翻訳が高辻知義だったが、ポプラ社歌舞伎絵巻では、イラスト岡田嘉夫、翻案橋本 治が担っている。
実際の歌舞伎と比べるわけにはいかないが、岡田のイラストがゴージャスで、橋本の文章は安心して読める。指環と同様、よく見る演題だが中身を知らない者には、膨大な伝統文化の裾野にある門扉をこれで叩くことができるという思いだ。
近松の「曽根崎心中」を岩波で読んでいたので、まずは「国姓爺合戦」を手に取り、次に本書の「義経千本桜」をひも解いた。指環に劣らず、繚乱する人物たちの相関図には文化の圧倒的な豊饒を感じるばかりだ。
「菅原伝授手習鑑」の次に本書「義経千本桜」と読み継いできたが、時代のせいか、武士道、命を懸けること、公私の公を優先させていることが、常識なのだろうが、わたしには改めて印象に残った。
また言葉遣いでは「・・・小せんといいます。昔は、フーゾクで働いていました」というくだりにはギョッとしてしまった。
著者は相当に悩んだと思うのだが「遊女」や「娼婦」では通らないと思ったのだろうし、いまどき子どもでも「フーゾク」という言葉にはある程度イメージできると踏んだのだろうが、本全体の品格からいって、もったいない妥協だったのでは? と思った。どうせ勝手なイメージを持ってもらうのなら、「遊郭」でよかったのではないだろうか。
義経紀(通常版)
源義経はもちろん、静御前、武蔵坊弁慶、那須与一、伊勢三郎など彼を語るうえでは欠くことができない人物が活躍するアクションゲームですが、RPGの要素もあるようなので個人的にはすごく期待しています。
個人で繰り出す必殺技、仲間と協力して発動する合体技、物語を彩る美麗なCGムービーなどを総合評価してもゲームとしては良作なのではないでしょうか。
義経紀(限定版)
週刊少年ジャンプで絶賛連載中の「DEATH NOTE」の小畑 健がキャラクターデザイン。
世の中に「義経」を題材にしたゲームはいくつかあるが、これは別物っぽい。
これまでの義経ゲームはただ義経の名を借りただけのアクションゲームだが、
この「義経紀」は小畑キャラが織りなすキャラゲー(良い意味で)に近い雰囲気。
とにかく小畑 健の描くキャラクターはすばらしい!繊細なタッチとキレのある表現。
そして声優陣も非常に豪華!田中敦子、大塚明夫、石田彰・・・。
それらのキャラクター達が新たな義経ワールドを作り上げている。
ゲーム部分もイベントでの試遊とPVを参考にすると、十分及第点のデキ。
アクション初心者から上級者まで幅広い層が楽しめそうなバランスとシステムに
~~なっている。ストーリー的な盛り上がりも期待できそう。
「DEATH NOTE」「ヒカルの碁」といった小畑作品に惹かれる人は要チェック!
現代語訳 義経記 (河出文庫)
平家追討の下りは無く、奥州まで落ちのびるまでの話がメイン。
義経がかなり贔屓めに書かれており、後の題材になるイメージの原点が伺える。
風流人であり、情に厚く、美形の不遇の男性。
この義経の魅力を引き出す仲間(あえて家臣とは書きたくない)
特に、武蔵坊弁慶や佐藤兄弟には見所多数。
彼らが居たから、義経は伝説になり得た、と思う。
能楽や歌舞伎、浄瑠璃などの題材に多数なった義経伝説に興味があるなら
是非オススメの一冊です。
但し、解説はあまり丁寧ではありません。
ある程度古典が判ると、もっと楽しめるかも?