I LOVE YOU -now & forever- (完全生産限定盤)
世に数々の夏歌を送り出してきた“日本のKing of Pop”こと桑田氏。
衝撃のソロシングル第1弾“悲しい気持ち”・桑田作品の中で最高傑作と信じて疑わない“いつかどこかで 〜 I Feel the Echo 〜”から25年、どのサザンの曲よりも夏らしさを運んでくれる“波乗りジョニー”から10年、夏の終わりを切なく歌いあげる 曲としてこれの右に出るものはいない“風の詩を聞かせて”から5年。
今回発売されたベストの曲群を聞くと、これらの曲がもつ神秘的な力に吸い寄せられるように自らの25年に潜在する記憶の断片が集まって、あっという間に1つの結合体となって蘇る。夏歌が持つ恐るべき威力とは、このことをいうのだろうか?
昔に比べメディアへの露出は控えめであるが、日本の音楽界はこの人ありきで成り立っている。
CMでも耳になじみ深い「幸せのラストダンス」は、久々に聞いた桑田氏らしい、すべての面においてキラキラとしたポップスだ。
こんな曲を還暦間近にしてさらっと書けるところはさすが。いつまでも青春を追い駆ける氏の生き様がうかがえる。わが敬愛するMusicianとしては、かの吉永小百合氏のように、いつまでも年を取らずに永遠の輝きを放ってほしいと思う。
サビまでの過程も、これまでの名曲と同じく絶妙なプロット。イントロは左のスピーカーからの単発アコギで始まり、次に右のスピーカーからエレキが参加。そして徐々にベースとドラムが加わって音圧が増幅、これが一気にサビで爆発的パワーとなって最高潮のリズムを奏でる。曲・アレンジ・歌詞は三位一体となり、それらが絶妙のハーモニーで融合し、久し振りに120%いやそれ以上の満足度をかみしめる。
その他の名曲とともに、間違いなく今後何十年も、息絶えるまで個人的に聴き続けるナンバーになるだろう。
“新しい人生を始めよう、共に“。
率直に言えば、プロポーズソングであるが、”家族と絆“に重きを置いたこのご時代だからこそ完成されたマスターピースではなかろうか。
その他の新曲もスロー・アップテンポとバラエティに富むが、久々のソロのアルバム「Music Man」ではちょっとお目にかかれなかったライトかつすぐに覚えてしまう聞きやすいポップス調の曲が多く、大変感激。
第一弾ソロアルバムの傾向を再び味わうことができ、この夏の最高の幸せの瞬間である。
さらに一曲コメントしたい。
「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない)」。
待望のCD化である。
86年末。明石屋さんま司会、Kuwata Band、松任谷由実、泉谷しげる、アン・ルイス、アルフィー、中村雅俊、鈴木雅之など当時80年代のテレビ番組を席巻していたメンバーが集まって作られた音楽ショー。このクリスマス特番のテーマソングであった。
7分超の作品なのに全く間延びを感じさせない。これほどまでに聞いている者の集中力を持続させるのは、いまさら驚きもしない桑田氏の神業のしわざである。
新曲の「幸せのラストダンス」同様、この曲もまたサビまでの流れが絶妙であり、桑田氏の精巧な“作曲Formula”にばっちりはまりまくっている1例。
桑田氏はサビまでの過程を非常に大切にする人だ、とつくづく思う。
曲のコアとなる“サビ”を一番前に持ってこず、安売りせず、サビまでの展開・プロット・構成をきちんと考えて、聞く者をワクワクさせてくれる。こんなの誰も真似できない。
作詞はユーミンであるが、非常にRomantic。数々の“恋焦がれる夢見る少女”を自身の歌の中で登場させた才能がここでも発揮されている。
新曲の「幸せのラストダンス」が、この26年前に作られた曲に引けを取らない事実も驚きであるが。。。
愛してやまない“桑田ポップス”をいつまで聞くことができるのか? は未知だが、我々日本人の心の琴線に触れる音楽を提供してくれるメロディメーカーとして、今後も日本の音楽界を牽引してほしい。日本や世界をめぐる変化は激しく、何が人道的で何が正義だか分からない世の中になってきている、悲しいことに。
しかし、常に自分のペースで自身のアイデンティティを踏襲し、そのコンセプトがまったくぶれない音作りに我々ファンは安心してついていける。この安堵感は何にも変えられない。音楽の引き出しも多く、この人の場合はマンネリズムとは全く無縁だ。
サザン活動休止から4年。来年はサザン結成から35年という節目の年。これに照準を当てて、桑田氏は今年の夏に既にサードからトップに変速ギアをシフトしたのか。誰にもわからない。