失敗学のすすめ
本書はタイトルのとおり、失敗から何をどのように学ぶべきか、そのコツと注意点が書かれている。それだけで十分に研究を必要とする内容に仕上がる。なぜなら、人は本質的に失敗を犯す生き物だから。そして痛い思いをしないと、本当には学べない生き物だからである。言われてみれば誰でも当然と思うのだろうが、それをきちんと追いかけて体系化しようとしたところが著者の非凡なところである。「失敗学」と名のつく類書は多く出ているが、本書から入るのが一番いいと思う。失敗学の概論から入れる感じがする。
福島原発で何が起こったか-政府事故調技術解説- (B&Tブックス)
タイトルに「技術解説」とあるので、この本を買う人は福島原発で起きた技術的な内容に興味がある方だろうと思うが、値段も安く、200頁で要領よく書かれていて、分かりやすい。
福島1/2/3号機で作動した安全設備や、逃し安全弁の作動方法、ベントの仕組みなど、事故に関係した原発特有の設備についての図や解説が5章にあるのは親切である。福島1号機の水位計が「原子炉に水がある」と誤表示(誤作動)した理由についても、5章に解説されている。
1号機と3号機の水素爆発の違いについても、原子炉建屋の構造設計の違いから説明している(なぜ、設計を変えたのか、調べて欲しかった)。
事故直後に話題となった「ベントの遅れ」と「海水注入の躊躇による遅れ」については「現場の状況から、そういう事実はほぼ無い」としている。これは、当時の一般市民の認識と大いに違う点であるが、現場員の調査を基にした本書が正しいと考えられる。
1/2/3/4号機の非常用ディーゼル発電機(DG)は、共用プールに別置きされていた2台を除き、全てタービン建屋の地下に置かれていたために、津波で浸水したことは良く知られている。更に、原子炉側の配電盤も共用プールの配電盤も、地下に配置されていたため浸水し、DG電力が使用できなかった、とのことである。(DGの海水冷却系が津波で全滅したことも強調して欲しかった。)
国会事故調査委員会と一部のTVが取り上げた「1号機のDGは津波前に停止した」という認定について、詳しく書いている。これは地震で重要機器が損傷したのなら問題だからである。これについては、現場員の証言を掲載し「上記は不適切な認定」と記載している。
背景要因については、全電源喪失を考慮しなかった背景、福島沖に大津波が来ないとした背景、安全神話などが記載されており、これらは著者が最重要と考えたものなのであろう。
失敗学のすすめ (講談社文庫)
「日本(人)は、失敗を忌み嫌う傾向がある」という。理解できる。
しかし、物事をよりよくやれるようになるためには、成功事例を学ぶ
より、失敗事例を分析するほうがよっぽど役に立つということは、実
際それをやってみれば大変よくわかる。
失敗した「人(チーム)(会社)」を責めるのではなく、失敗の構
造を分析し、失敗しないようにする「技」を身に着けようという姿勢
をとるという「パラダイムシフト」を促してくれる本です。