水道橋博士の異常な愛情―または私は如何にして心配するのを止めて風俗とAVを愛するようになったか。
いわずとしれた浅草キッドの水道橋博士の性の奴隷否、性は徒労におわる毎日を隠すものなくノーカット、モザイクなしで届けた快心のエッセイ。人によっては回春というかもしれない。
毎日が女にあけくれるというより女に対しての冒険と探求、実践と反省。じつはどの男も思っているのだがそれが自分だけ異常ではないかと思ってしまう、でもこれを読めば正常だということがわかるはずであり、人生皆兄弟の精神がわいてくることは必至。
笑いも涙もつつみこみ、きっと2003年のいまも水道橋少年のエロ心は消えてないはず、「笑いの星座」を読む前にこれを読むことをおすすめしたい。前者がメジャーならこの本は彼のアンダーグラウンドな部分をクローズアップしている。
博士の異常な愛情 [VHS]
四の五の言わずに、まずご覧あれ。クーブリック(←英語発音では。)のペシミスティックが伺える不朽の名作(珍作?)です。セラーズの3役については、もう何も言うことは無いでしょう。脇を固めるヒトビトも負けずに「超」個性的。戦略の盲点を見事に突き刺し、ニヒリズムも加えてのラスト、BGMもさらにアイロニーをたたえて「苦笑」するしかありません。
博士の異常な愛情【字幕版】 [VHS]
最終戦争を徹底的なブラック・コメディにしてしまったキューブリックの有名な作品である。P・セラーズのひとり3役の奮闘ぶりについてはあえていうことは無いが、その他の主演者たちもアブナイ連中ばっかりである。いつもハイで好戦的な戦略空軍将軍(G・スコット)、キレてしまった爆撃隊司令官(S・ヘイデン)、ただ1機帰還命令を受信できずソ連ICBM基地に水爆とともに落下していってしまうB52機長(S・ピッケンス)など、みな滑稽でありながら悲惨な役柄を好演している。米ソ冷戦構造の崩れた今日の目からは、良くできたコメディ・ディザスターSF映画として捉えるのが妥当であろうが、私には少々悪ふざけが過ぎる様に思われるシーンが散見される。同時期に同じ題材にて作製されたS・ルメットの「フェイル・セイフ」(一般的評価は低いようであり、国内でのDVD・ビデオ入手も現在困難だが)の全編を通じた絶望感・無力感と生真面目な作品の作りの方に個人的にはひかれるものを感じる。
博士の異常な愛情(1枚組) [DVD]
明らかに交尾を連想させる、それもトンボか何かの昆虫類の、少しユーモラスでちょっぴりペーソスも漂うような
B−52と空中給油機の仕草、
キューブリック監督は始めからこのタイトルバックで、この作品の基本的なトーン、即ち、“おふざけ”を宣言している。
もちろんキューブリックのこと、低級なドタバタであろうはずもなく、
この導入から期待は膨らみ、裏切られることはない。
冷戦下の米ソ核兵器競争のただ中、発狂した一人の米将軍によって核ミサイル発射の指令が出される。
両国の懸命な回避努力にもかかわらず、ついに終末核戦争に突入か!?・・・という物語が、
いかにもキューブリックらしい濃いめのブラック・ジョーク満載で綴られる。
役者も曲者揃い。
発狂した将軍、ジャック・リッパー(名前からしてすでにブラックである)にはスターリング・ヘイドン、
その巨体が醸す存在感は「ゴッド・ファザー」の悪徳警部、「ロング・グドバイ」の書けない作家と同様、圧倒的である。
その将軍と渡り合う空軍基地の大佐をピーター・セラーズが素で演じている。
セラーズはさらに、全く異なる二役を巧みに演じる。見事なメークぶりで、最初は彼であることが分からなかった。
先ずは、終末戦争回避のため必死の努力をするもソ連側に振り回されるアメリカ大統領。
ホットラインに出たソ連首相が“酔っている”という下りには、思わず吹き出す。
そして、その大統領の科学顧問で、勝手に腕が“ハイル・ヒトラー”になってしまう車椅子のマッド・サイエンティスト、
ストレンジラブ博士(恐れ多くも小生もその名前を無断拝借しています)。
水爆の父といわれ、ロス・アラモスの原爆実験を目の当たりにして「なんだ、こんなものか」とうそぶいたという
エドワード・テーラー博士がモデルという。
そして、ジョージ・C・スコットが、同じ軍人でも「パットン大戦車軍団」のファナティックな時代錯誤的将軍とは異なる、
愛人を囲うちょっとコミカルでねちっこい反共軍人を演じる。役が変わっても、この人の“濃さ”は変わらない。
テンガロンハットにテキサス訛りの“クゥエ、クゥエ・イングリッシュ”で、核攻撃指令に悩みつつ、
最後にロディオよろしく核爆弾にまたがり降下するB−52機長は、どこかで見た顔だと思いませんか?
そう、後に「ゲッタウェイ」の終幕近く、スティーブ・マックイーンとアリ・マッグロウを乗せて
おんぼろトラックで国境を渡る気の良いメキシカン、かなり老けていましたが、彼がスリム・ピケンズその人です。
PARADOX PARADE
ギタリストの失踪、そして脱退というダメージを負いながらもバンドは進んだ。足をもがれても、翼を生やし、一気にここまで辿り着いた。
「PARADOX PARADE」はそれ程に、大きな飛躍を遂げた進化作である。
1stでも十分に力を出し切ったといえる出来だったが、サポートの力も借りたにせよ、このハイペースでここまでスケールアップした作品を作ってしまうとは驚いた。さらにハードに、さらにダンサブルに、さらにポップに、さらにメロディアスに、さらにロマンチックに。このバンドの持ち味が全て倍加ような感覚。まるで手応えが違う。
ブレのないバンドのサウンドに甘く擦れた渋い歌声、そして豪華ギタリスト陣が本当に素晴らしい仕事をしている。それぞれ楽曲の色に合わせた見事な演奏、特にFoZZtone竹尾の功績はでかい。
個々の曲の細部までアレンジが冴え渡り、アルバム全体としても素晴らしい。前作では居心地の悪かったセッションも、きっちりと収まっているどころか、その存在意義がはっきりと見えてくる。
ハイライトは「アンドロメダ」と「プリズム」だと思う。正直こんな正統派の名曲が出てくるのはもっと先だろうと思っていた。或いは勝負時にシングルでと考えていたので、このタイミングでのアルバムに収まってくるとは、全くの予想外。まだまだ勢いで突き進むことも出来ただろうに、異常な進化速度だ。
そして歌詞の力も圧倒的に増した。大袈裟に言えば、単なるセンテンスの結びつきだったものが、しっかりと感情やメッセージに則った物語を描き切っている。それくらい違う。それに伴って歌声がまた素晴らしく活きている、という相乗効果も。
奇跡的な名盤。このクオリティを保って進めるかは未知数だが、まだまだ底知れないバンドである。きっと期待できると思う。
まずはとにかく、こいつは必聴だ。