ペルセポリス オリジナル・サウンドトラック
フランス製作のイラン映画『ペルセポリス』のサントラ。
オリエンタル風味を排除して、普通に情感豊かな劇伴になっているので
「イランぽさ」を期待していると面白みに欠けるかもしれませんが、
普遍的な音楽を目指した──これは監督の要望なんだそうです。
本編では意図的に「音痴」=「パワフル」に唄われていた『アイ・オブ・ザ・タイガー』(20曲目)ですが、
このサントラで聴くと、普通にフレンチポップで、すごく耳に馴染みます。
しっとりしていて、いい感じです。
オススメです!!!
ペルセポリスII マルジ、故郷に帰る
少女の成長物語として、或いは外国人としての生活体験記として、共感できる内容があります。一方で、国王による上からの改革、革命イラン、戦争という特殊な社会を内部から描いた、貴重な情報をもたらしてくれます。しかもイラン人が書いた漫画ということで、様々な側面を持つ、得がたい作品となっていてお奨めです。
注意したいのは、作者はカージャル朝国王の血筋を引く、非常に特殊な環境に育った少女だという点です。祖父は首相を務め、父親は技術系会社員でありながらBBC放送を理解し、キャデラックを持ち、住み込みの家政婦がいます。作者はフランス語で教育をする学校に通い、革命後ウィーンに留学します。革命前は家族でスペイン旅行に出ています。
日本の読者が作者に共感しやすいのは、作者が欧米的価値観の家庭で育ったため、欧米的価値観の持ち主としてイラン社会を見ている点にあります。革命後のイランは、戦時中の日本の特高のような「革命防衛隊」に抑圧されているものとして描かれます。戦時日本や旧共産圏社会のような印象を受けるでしょう。問題は、多くの平均的なイラン人にとって、イラン社会が「同じように見えているのか」という点です。2005年の大統領選挙で保守派が圧勝したように、イラン人の多くは意外に革命後の政権を支持しています。革命前40%程度と言われた文盲率が80%に上昇し、義務教育が全土・全階級に行き届くようになったなど、民衆に支持されている面もあります。
マルジの家庭は、戦前日本の華族に比定できると言えます。国民所得が月100ドル程度の国で、自由に外国へいける人々は、民衆から妬まれる立場にあるわけです。本書を読むとき、このような側面もあることを考えつつ読むことも、大事かと思います。
ペルセポリス [12 inch Analog]
幻の音源が記念すべきアナログ盤での日本初発売に感謝!!
須永辰緒さんがDJの際、あちこちで回してくれたおかげです。
アルバム全編通して、壮大でとてもかっこよかったです♪
Persepolis : The Story of a Childhood and The Story of a Return
イラン出身、フランス在住の絵本作家の自伝である。
ハードカバー版だと2冊になるのだが、このペーパーバックは1冊で完結する。
なので装丁は「それなり」ということを覚悟して購入した。
日本語版だと、マンガのようにあっさり読んでしまうのであえて英語版を選んだ。
これが功を奏し、日本語版の表現よりも濃く感じるので、じっくりと内容を把握しながら読んだ。
(日本語版はAmazonの「なかみ検索」で見た印象だけでの印象。ただ英語版だと字が細かいので目の疲れには注意。)
セクションが子供時代の話で10話、西側諸国に留学ののち故郷に帰った時の話で9話、合計19話の構成になっている。
このアニメーション映画を以前見たことがあり内容は把握しているのだが、グラフィックノベル版はアニメ版にはないエピソードもあるので、アニメ版とは別物のような新鮮な気持ちで楽しめた。
イランは長い歴史から見ても、専制政治と服従の繰り返しなのに豊かで独自の文化を守ってきた。
この本では白色革命からイラン革命、イランイラク戦争と激動の時代の中で、筆者率いる登場人物の不安と葛藤を描いている。
この作品の他のレビューにも述べられるのが、筆者はカージャール朝国王の血をひき、上流階級の家庭で育ったことである。
普通の人間とは違い、金もあり環境が整った人のエピソードだ、と考える向きもあるだろう。
しかし今現在筆者は数か国語を話せていて、絵本作家とアニメーション監督の肩書を持つのは、この本に書かれている以降の人生も努力を惜しまない人だと推察される。
恵まれていながらも筆者は更に努力して知識を吸収し、自由に自己表現ができる世界で立派に生きてほしい、という気高い家族のバックアップもあるのだと思う。
西側諸国に移住すればイランで過ごしてきた生活が一転する、と筆者の父親はここで述べているので、恵まれているとはいえ娘一人をオーストリア留学に出したのも重大事で、両親は抑圧的な国に残り娘に希望を託したのだろう。
不安や葛藤と戦う姿は社会情勢が違えども、社会との違和感を感じる面はなんら私たち日本人と変わりはない。
だが、抑圧された社会の中で生きるイラン人の強さやユーモアを忘れないところも教訓にしたい。
また「一部の過激論者の行動でイランをひとくくりにして判断されてはいけない」と筆者は冒頭のイントロダクションで語っている。
そんな筆者の想いが詰まっている1冊である。
Persepolis Plus Remixes 1
ヤニス・クセナキスの轟音コンレート、「Persepolis」のリミックスコンピレーション。GRM studio MIXを収録したdisc1と大友良英、池田亮二、秋田昌美、フランシスコ・ロペズなどのエクスペリメンタルエレクトロニクスアーティストがRemixを手掛けたdisc2の二枚組だ。建築家としても名を馳せたクセナキスだが、建築空間をフューチャーしたペルセポリス遺跡でのライブはあまりにも有名。ライブではサーチライトやレーザーを多用し、ライトアップされ非現実化された遺跡の中で100を超えるスピーカーが唸る。視覚聴覚の総合空間演出は多才な彼だからこそできる技か。「Persepolis」にも見られる金属的なノイズコンレートは、音のグラビティを感じるほど不可視の圧倒的パワーがある。オリジナルの時点でかなりの衝撃を受け圧倒されてしまう「Persepolis」だが、それを更に前衛アーティストの手によって洗練され、個性を増したで!あろう本作は期待を裏切らない出来だ。大友良英は金属の摩擦音を引き伸ばし、ストリングスのような不協和音を作り上げる。池田亮二はパルス音の中に濁流のごとくハーシュ音が注入し、そのノイズは確固たる音階を持っているかのようにハーシュでありながらHI-FIだ。原曲の面影はほとんどないが、オリジナルの持つコンセプトを池田亮二なり後継し形にしている。メルツバウこと秋田昌美は耳の奥深くで覚醒するかのようなディープなノイズを展開し、体液の流れる音のような肉体的な流れを見せる。それは体内の音をギミックしたミュージックコンレートの様でもあり、面白い。フランシスコ・ロペズはオリジナルからサンプリングしたインダストリアルノイズを微細音で展開するミニマル路線を提示した。