木に学べ―法隆寺・薬師寺の美 (小学館文庫)
1988年に出た単行本の文庫化。
西岡常一さんは、代々法隆寺の宮大工の棟梁を務めてきたという家柄に生まれ、法隆寺昭和の大修理、薬師寺の金堂や西塔の再建を手がけた人物。
宮大工としての気構えがメイン。木の扱い方、道具の選び方、仕事への情熱。そういったものが熱く語られていく。法隆寺、薬師寺のことのほか、自身の生い立ち、棟梁としての仕事、木を選びに台湾へ行ったことなども。
宮大工としての凄さが伝わってくる本であった。特に、木へのこだわり、大工としてのプライドは比類ない。
ただ、昔は良かった式の話が多いので、どこまで信用できるのか。それから、同じ話の繰り返しが目に付く。
関西の言葉で、語った調子のそのままが収められているので、慣れていないひとには読みにくいかも。
なお、聞き書きの名人として知られる塩野米松さんがインタビュー、西岡さんの話を文章にまとめたものである。
新装版 法隆寺 (日本人はどのように建造物をつくってきたか)
建築では読み方が特殊な言葉が多く有るのですが、この本は子供でも分かるようにとの配慮からか、全ての感じにルビがふられていて分かりやすいです。
法隆寺の宮大工、西岡棟梁が次の世代にむけて、こう話したら分かるやろか、こう書いたらどうや、と愛情あふれる思いで手取り足取り、細部にわたり気を配って書いて下さった様子がひしひしと伝わってきます。
イラストの図がまた非常に分かりやすく、古建築になじみが無い方でもそのしくみが確実に分かるようになります。
社寺建築を学ぶ方は、まずこの本を最初に読み、パース図面(これが力肘木等丁寧に部材の説明が入っている)を手元に置きながら他の本を学ぶことをお勧めします。
法隆寺の謎を解く (ちくま新書)
先日、「隠された十字架―法隆寺論 (新潮文庫)」(梅原猛著)(以下、梅原説と称す)を読み、大変に楽しむことができたが、1972年の刊行ということもあり、その後の法隆寺を巡る見解の進展に興味が湧いてきました。
そんな時、このサイトでのレビューを通じて知ったのが本書でした。
本書は、「建築学」からのアプローチで、梅原説の大前提である、「法隆寺中門の真ん中の柱は怨霊を封じこめている」という説に異を唱えるものですが、次の点で評価できる書物であると感じました。
【仏教のルーツという視点】
本書では、仏教建築である「法隆寺」を解析するにあたり、仏教のルーツである「インド」や、伝来の経由地である「中国」や「韓国」での建築様式や信仰形態にメスを入れています。
これは梅原説にはなかった視点であり、そこから導き出される見解には説得力を感じています。
また、法隆寺の建材の伐採年が近年の研究で、かなり詳しく特定されており、その点を踏まえた展開にも注目しました。
【総合的な視点】
本書の著者は、建築学の視点だけでなく、「横断的かつ総合的に眺めわたす必要があり」、「歴史的・政治的人間ドラマのなかに建築を位置づける試み」を行ったと述べています。
梅原説では、専門化し、細分化された中での「法隆寺論」に異議を唱えていますが、その点を踏まえての論説と思われ、評価できる点であると感じています。
梅原説といい、本書といい、熱のこもった「法隆寺論」を読み、何度か訪れたことのある「法隆寺」ですが、これは近いうちに再訪しなければ、気が済まなくなってきてしまいました。
木製 1/150 法隆寺 中門
60歳での定年退職後、民間会社でキャリアを生かした仕事をしているが、残された人生の優先事項は「好きなことをする」ということ。ゴルフ、ガーデニング、囲碁、俳句など趣味と呼べるものに少なからず接しているが、新しくチャレンジしたいものは「日曜大工」。道具を少しずつ揃えてはいるがなかなかイメージが盛り上がらない。そんな時、少年時に親しんだプラモデル(船、戦車、自動車etc.)の領域の「木」を使った城のどの作品への挑戦だ。細かい作業ではあるが一歩一歩形になっていくのが何とも楽しい。日曜大工のプランの勉強にもなる。最初は小さいモデルからのスタートであるが、少しずつ大型の作品にも挑戦したいと考えている。