なんだかなァ人生
大好きな漫画家・柳沢きみお先生の初のエッセイと知って即購入した。
柳沢先生の知られざる生い立ち,趣味の遍歴,鮨に対する飽くなきこだわりなど,名作「大市民」の世界そのまんまの,ダンディズムが漂い,シビレテしまった。
歯止めの効かない自分の性格,暗い世相,女・子供相手の,醜いまでに堕してしまった日本の漫画界の現状などを「なんだかなァ」と鬱々と嘆きながらも,しかし,どこか底抜けに明るく,随所にクスリと笑わせられる表現が散りばめられており,今年読んだ本の中ではピカ一の本であった。
ところで,最近,「大市民」が尻すぼみで終り,柳沢先生の活躍の場が少なくなったことを,ファンの一人として残念に思っている。
「愛人」「妻をめとらば」「男の自画像」「俺にもくれ」「寝物語」「流行歌」等々・・・柳沢先生が描く,中年男性の哀愁が滲み出た「大人の漫画」は,それらの主人公たちと同じく自分の将来に絶望した中年男である私には堪えられない物語を創作し続けてくれる柳沢先生の,更なる活躍に期待したい。
エッセイという新分野を開拓しつつある柳沢先生を,これからも応援し,続編の出版を期待したいと思う。
「人生って,何だろう。」と真面目に考えている,悩める男たちに読んでほしい一冊である。
惜しむらくは,パソコン嫌いな柳沢先生が,このレビューを目にすることはないのだろうな・・・なんだかなァ・・
KOUSHOKUダンディ 1 (ジャンプスーパーコミックス)
想像に違わず「大市民」の亜流版でした。食と色(性)にこだわりを持つ主人公と
いいつつ、出てくるのは「白菜鍋」「ペラカツ」と大市民でお馴染みのメニュー。
寿司屋に入っては、相変わらずの「イカの塩レモン」。多少は色(性)に関して触れ
てはいるものの、正直(彼のエッセイのタイトルではありませんが)なんだかなァ〜
(どこがダンディ?)という作品ですね。巻末エッセイで、「自身の漫画が単行本に
なるのは久しぶり。理由は簡単で、単行本にしても売れなくなったから。だからこの
本の売れ行きが、すごく心配」とありますが、この内容では正直厳しいかと。