シューベルト:ヴァイオリン作品集
シューベルトのヴァイオリン曲は、これまでほとんど聴いた事がなく、またその機会がなく、このCDは新しい喜びをもたらしてくれた。
モーツァルトよりも若く早世したシューベルト、ソナチネはその彼の十代の作品だ。青春の抒情と評されるけれど、抒情というよりは本能的に楽しくて仕方が無いといった「純粋さ」を強く感じる。そして春風駘蕩、漆原さんのまさに春の風のような演奏である。
これらソナチネには歌曲の一節かと思われるような旋律が随所に現れ、逆にヴァイオリンは歌う楽器であるという事を再認識させられるのだが、彼女のヴァイオリンはその歌に好個のもので、この上なく清らかにそして悠々と流れていく。ロータスカルテットと共演したイ長調ロンドの冴え冴えとした美しさ、ハ長調幻想曲の無窮動に誘う極まりない楽しさ、いずれも同曲群のベストプレイに違いあるまい。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番
日本を代表する国際的ヴァイオリニストの一人である漆原朝子は、ライヴ演奏においても、発表するCDにおいても、常に期待を裏切りません。2003年6月にリリースされた『漆原朝子のシューマン〜ヴァイオリンソナタ全3曲&3つのロマンス』のコンサートライヴCDに続きを2005年6月にリリースされたこの『漆原朝子のブラームス〜ヴァイオリンとピアノのための作品完全全曲演奏会』も素晴らしい演奏が収められています。ブラームスの作曲家としての素晴らしさを、まざまざと知らしめてくれる演奏です。作品自体もともと好きでしたが、このCDを聴いて更に好きになりました。
同じ千葉県出身として、誇りに思える演奏家です。漆原さんが東京藝術大学付属高等学校在学中の時期に、同じ御茶ノ水の学校に通っていて、同じ総武線を利用していたので、たまにお見かけしましたが、その可憐な姿がとても印象的でした。