図説 イギリス手づくりの生活誌―伝統ある道具と暮らし
著者は自給自足の生活の第一人者、ということで、いわゆる現代的な消費文明とは異なり、生活そのものが身近な範囲で完結する時代を愛しており、その理想として、過去のイギリスの生活を取り上げています。
学者ではなく、参考文献や文学に根ざした引用はほとんどありません。この方が過ごした暮らし、実際の体験などから、道具類のひとつひとつのエピソードを書いていく手法は、時に筆者の方の個性(現代文明への嫌悪感)が目立ってしまいますが、わかりやすく、微笑ましいです。
煙突掃除の方法で、誰がショットガンを使うことを想像するでしょう? バターやチーズの作り方、当時の農村の暮らしで必要だった豚の飼い方、家の構成、台所にある調理器具……すべて、生活のにおいがします。
道具のイラストや生活に関する描写がとても多いので、そのひとつひとつが当時の生活をイメージする手助けをしてくれます。
『図説ヴィクトリア朝百科事典』よりも、「個人生活」に踏み込んだ内容です。どちらも合わせて読むと、当時どんな暮らしをしていたのか、その輪郭が強く浮き上がってくるでしょう。