クラシック音楽はそこそこ聴き、オペラではワーグナーの作品を何本かDVDで鑑賞したことがある、程度のもののレビュー…というよりはただの感想です。
ウィーン旅行の計画にオペラ鑑賞を組み込んだところ、魔笛のチケットが取れたのでAmazonの各商品を見比べて、みなさんのレビューとライブを聴いたことのある指揮者だったことからこちらのDVDを購入しました。
「魔笛」については何の前知識もないまま(パパゲーノのパパパ…を聞きかじっていた程度)いきなり鑑賞しはじめましたが、作品として普通に面白く、悪?役が主人公(タミーノ)の立ち位置によって入れ替わっていくストーリー展開やなにより登場人物の性格付けなどもバラエティ豊かで(大真面目な主人公とヒロインの父、やけに悲観的なヒロイン、不思議な3少年、なにより人間味あふれるパパゲーノ!)最後まで飽きることなく楽しく鑑賞できました。 個人的には指揮を見るのが好きなのでオーケストラピットの映像があったのが嬉しかったです。 また、舞台から客席にむかって問いかけるようなセリフが多いのが印象に残りました。鑑賞者がおいてけぼりにならない、舞台の上の役者と一緒になって楽しめるのではと、このDVDを見たことでさらに旅行先での鑑賞が楽しみになりました。
貞淑さは19世紀に於ける男性側からの理想的な女性像として根付いたものでありますが、この家庭的尼僧崇拝とも言える女性像を描くにはマルトンの様な成熟した表現が理想的なのかもしれないとも思います。 ローエングリンの登場は本来持っている非現実感と憂いを含んだ繊細な様子がヴィジュアルとして見事に描かれています。 マルトンの《そよ風のアリア》ですが、冴え冴えとした清潔な表現が美しく無垢な様子が見て取れます。 リザネクのクレド《辱めを受けた神々よ》は、ドラマティック・ソプラノとしての面目躍如たる表現です。 ホフマンの《花園のアリア》は結局は孤独であるローエングリンの絶望が演技から痛いほどに伝わってきます。また、この間の相愛から亀裂への過程におけるマルトンのヒステリックとすら感じる激しい表現は流石に見事で、彼女のドラマティック・ソプラノとしての特質を表しています。 有名な《名乗りの歌》は冷たく残酷なものです。舞台中央の全面に剣を支えにスッと佇んだホフマンが歌うこの歌は冷たい輝きをもって歌われますが光りそのものは必ずしも温かみを持つとは限らないと感じさせます。そして敢えて淡々として歌われるこの歌からはローエングリンの掟に従わざるを得ない宿命の悲しさが見えてきます。 それに対して、再び迎えに現れた白鳥に対する愛情深い《愛しい白鳥よ》は哀惜の思いが切々と歌われて大変に感動的です。
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