南北対立が激化しテロリズムの巷となっているイタリアを舞台に、福祉事業を隠れ蓑にした対テロ部隊『社会福祉公社』で戦闘要員『義体』としてつかの間の生を生きる少女とパートナーである『担当官』との絆を描く物語。ついにクライマックスとなる13巻目。
前巻までで「一期生」の生が終わりつつあることが暗示されるが、激しい戦いは彼女たちの残されたわずかな幸せも押し流していく。
とにかく読了後息をつきたくなるほどに濃密な一冊となっているが、そのなかでも、マルコー・ペトラ・ピノッキオら過去のエピソードが伏線として消化され、物語に厚みを持たせているのがすばらしい。
政府は『社会福祉公社』をテロリストへの生贄とし、『公社』は組織としてそれを知りながら、当然のごとく受け入れて前へ進む。
一方、最初義体を誰よりも人として扱いながら、ついにロボットとして使役することを決めたジョゼ。また、徐々に徐々に心を通わせてきたヒルシャーとトリエラ。彼らもそれぞれの立ち位置は違えど、どんどんと追い詰められていくなかで、ついに復讐の連鎖に絡め取られた自らの人生そのものとの対決を迫られる。
復讐のため、愛のため、正義のため、理由は違えども、人はわざわざ苦しい方へ進まざるをえないときがある。
『公社』の立場、テロリストの立場、そして主人公達の立場が相似して入れ子のようになっていて、彼ら自身の明白な意志のもとに破滅へと向かっていくさまがテンポよく描き出され、それらは読者自身の人生のメタファーともなって、心を揺さぶられずにはいられない。
相田裕「GUNSLINGER GIRL」11巻目。
シリーズの中でも最も激しい、肉迫した戦闘が描かれる。
ジョゼとジャンが最も憎むテロリストで仇でもあるジャコモ率いるヴェネツィア派の占拠計画。
それを阻止するために社会福祉公社のフラテッロ達が総出で突撃をすることになる。
とてつもない動きのスピード感や迫力と共に、一瞬一瞬の攻防がこれ以上ないくらいに丁寧に描かれている。
この絵的な「力強さ」は今のガンスリならではの醍醐味だと思う。表現も構図も初期と比べると大分タフになった。
読み手が身震いするほどの生と死を賭けた命懸けの攻防。
敵が敵なだけに、いつもの数倍緊張感も大きい。
しかし何よりも素晴らしかったのはトリエラの存在。彼女の成長。
10巻からの流れで彼女は明確な意思を持った。
公社の人形ではなく、一人の人間の女の子としての当たり前の感情、それが蘇った。
好きな人の為に生きること、生き抜くこと。
それを決意した彼女の行動はとても美しいものだと思った。ヒルシャーの歯を食いしばるように彼女を見守る描写も胸を打つ。
しかしそれらとは真逆に、ジョゼとジャンの兄弟に関してはなりふり構わない様子で、
ジャンはともかくジョゼがあそこまで感情を剥き出しにし、義体のことを考えない様は相当のインパクトがあった。
なぜ彼らがそこまでの行動をとるのかは客観的事実の他にもこの巻の後半に収められている彼らの過去話、
それでまじまじと実感出来ると思う。 尚、クローチェ兄弟の過去話は12巻まで続くようで、そこで復讐心の根っこが描かれる模様。
色々な感情や状況が交差する11巻目。最後まで無感だったベアトリーチェがあの瞬間、何を思っていたのか。
それとも最後の最後で何かしらの感情が芽生えたのか。 読み終えてからふとそんなことを考えた。
メディアワークス刊・月刊コミック電撃大王連載
相田裕の「GUNSLINGER GIRL」第1〜5話を収録したコミックス1巻です。
ヨーロッパの社会福祉公社という建前を持った政府の超法規的諜報機関を舞台に、
五共和国派(テロ)との政治抗争と、異常な身体能力の「義体」として
生まれ変わった少女達の葛藤と堕ちゆく様をクールに描いたドラマ要素の濃さが魅力の本作。
第1話「天体観測」★★★★☆
やや引っ込み思案の義体ヘンリエッタと担当官ジョゼの心の交流を描いた優しさの残る物語です。
冒頭から過激な銃撃戦が描写され、表紙の見た目とは裏腹の緊張感に目が離せません。
全身に暴行を受けた哀しき記憶自体も消え失せる義体の能力とその危険性を鋭く捉えています。
第2話「Love the neighbor」★★★☆☆
かつては全身麻痺の障害者だった義体・リコの無垢なる残酷さを強調したエピソードです。
ホテルのポータとして働く少年・エミリオに淡い感情を抱くものの、
人間道徳をも欠落させる義体の「条件付け」の静かな悲劇に息を呑みます。
第3話「THE SNOW WHITE」★★★★☆
金髪ツインテール、褐色肌の義体・トリエラの憂鬱を描いています。
自身が義体であることをよく理解している彼女の大人びた振る舞いと
自分を押し殺した歯痒さの描写が秀抜です。義体として残る人間性の温かみと
担当官ヒルシャーのぎこちない優しさも内包しています。
第4,5話「エルザ・デ・シーカの死(前編、後編)」★★★★★
義体・エルザと担当官の殺害事件が発生。超人的能力を誇るはずの義体がなぜ?
そこに秘められた盲目の愛の悲劇と、未だ葛藤の中にいるヘンリエッタが語る
無意識の脅迫が義体の持つ真の残酷さを暴き出した名エピソードです。
第8話はアニメならではの演出が非常に優れており、二期で最も私のお気に入りの回です。 ビデオを20回以上見返してしまいました。
担当官を失ったクラエスの「いつも通り」の毎日は、一見無機質で悲しみの中にあるように 描かれたところから話は始まります。でもそれは鏡のように、表裏一体のもので、実は幸せ の欠片があちこちにある様がわかります。
彼女がアンジェと二人でプリシッラにスクーターで乗せられ、三人乗りで夕日をバックに 走る落ち着いた場面は、義体と言う悲しき運命を持つ彼女達の生きる毎日が、時に幸せな積 み重ねの中であることを示しています。
積み重ねられてゆくそういった「いつも通り」の風景の中で彼女は、幸せと悲しみの交差の中 を、精一杯生きることで失った担当官に教えられた生き様を、体現しています。 名曲「スカボロー・フェア」をテーマにした爽やかな物語と共に、私達は学ぶでしょう。
第9話は、一転してに美しいドレスに身を包み、担当官のために暗殺と言う汚れ仕事をこなす 義体の姿が描かれています。
第8話と9話二つの回での小さく光った共通のテーマは、ベアトリーチェ(愛称:ビーチェ)。
漫画ではほとんどキャラクター性がわからないビーチェですが、二期ではこの子に少しですが スポットが当てられています。メインヒロイン達は担当官を溺愛し、生きる意味に全く 迷いがありませんが、彼女らと違ってビーチェは、まだ模索している最中にあります。
何の興味もなしに淡白に生きる彼女が、同じく淡々と生活しながらも充実して生きるクラエスと 共にするうちに生きる意味を見つけようとし始めます。少ないカットではありますが、微笑まし い場面です。
そして私達もビーチェでもあります。
「それって‥‥楽しい?」
一見馬鹿にしているような台詞です。でも‥‥教えてほしい。そんなおぞおずと聞くビーチ エの問いを私達は持っているのですから。
壁紙は、まぁ良し。スクリーンセーバーも、良いことにしておきます。 デスクトップ・マスコットは、かなり物足りないかな。オマケだと 思っておきましょう。ボイスは、もう少しヴァリエーションが 欲しかった。少な過ぎ。 「資料編」的な部分は、「デスクトップ・アクセサリー」ではないが、 この作品の「世界」への導入としては、価値有りと見ます。 基礎知識の欠如している私には、役立ちました。 フィギュアについては、判断はそれぞれでしょう。ヘンリエッタの イメージは、アニメとコミックスでも雰囲気が違うように思うし、 それを立体に現すとなれば、尚更変わっても仕方が無いと言うか…。 「全体の出来」は、それほど悪くないと思いますが、コストパフォーマンス という視点からは、些か高いですね。
|