2010年から2012年に月刊コミック・ビーム誌に散発掲載された短編集です。 鬼才丸尾末広氏はデビュー当時から昭和初期の小説やビジュアルの影響が強い美麗・頽廃的作風が印象的でしたが、本作も全てその路線です。 ・瓶詰の地獄 丸尾氏には珍しく陽光降り注ぐ南の孤島を舞台としながらダブルイメージの技法を駆使した死の隠喩に圧倒されます。 あからさまに仄めかされている兄妹の秘密もそのものズバリは描かれていません。 しかし実に背徳的です。 ・聖アントワーヌの誘惑。 本書内では一番コミカルな短編。 丸尾氏が好きな「聖アントワーヌを題材とした絵画のベスト5」が記載されています。 氏の選からは漏れましたが世田谷美術館蔵の素朴派アンドレ・ボーシャン作の物は実に可愛いので機会が有ればご覧下さい。 ・黄金餅 古今亭志ん生の名演で知られるブラック・ユーモア的落語を原作としています。 過去作の「無神経かさねが淵」と同傾向の作品で美しい容貌を持ちながらも因業な登場人物達の描写に丸尾氏の面目躍如たるものが御座います。 ・かわいそうな姉 作者オリジナルの昭和初期を舞台とした作品。 薄倖の少女が春をひさぎながらも障害の有る弟の為に健気に生きる様子を高畠華宵に影響を受けた美麗な筆致で描いています。 全く救いの無い結末共々、可哀想さの博覧会的な作品。
後半3篇には華麗ながらも現在の作品では珍しい貧しさから来る人々の殺伐とした様子、簡単に身を売る子供、障害の有る者に対する差別・搾取等、迫真の描写が多く、印象的です。 表紙の絵を見て「かわいそうな姉」を読むとキャラクター・デザインの差に驚くと思います。 シュールレアリスム、ドイツ表現主義、大正ロマン等、古今東西の名画を含む様々な映像作品に対するオマージュや死とエロティシズム双方が強くが感じられる唯一無比の作風です。
氏のファンの方、強烈なビジュアル・イメージがお好きな方には大いにお薦めです。
I'll never forget the first time I went into a sento in Japan, mainly because it was an unqualified disaster. I had no idea what I was doing, and had no one to show me what to do. I tried my best to watch the other bathers to see what they were doing, but staring at a bunch of naked guys isn't exactly the best way to go. The worst part was that I didn't know enough to bring along my privacy towel. You have no idea how much that little piece of cloth matters when everyone else has one, and you don't. Oh, how I wish I had had this book beforehand!
"How to Take a Japanese Bath" is a simple guide, only 40 pages or so. Because of the fantastic illustrations, it is more like a manga than a book. Inside the rules of the bath are laid out in twelve simple steps, in an easy-going tone that doesn't talk down to you or lecture. It is pretty simple, if someone explains it to you as well as author Leonard Koren does here. In the back is a short overview of the history of bathing culture in Japan, and some basic Japanese phrases and kanji to help you navigate. It is, in short, everything you need to have a better experience than I did.
The illustrations are what really set this apart from being just a pamphlet. I have to wonder what editor selected Suehiro Maruo, a successful contemporary artist best known for his violent and somewhat disturbing artwork, to illustrate this pleasant little guide to a peaceful and relaxing pastime. Imagine going to Japan and finding a guide to eating a hamburger, illustrated by Clive Barker, and that is what you are getting.
高校生の頃渋谷の書店で平積みになっていたのを見て、さんざんまよった挙句(女子高生が店頭でこれを買うのは勇気がいりました)購入した本です。美しく、エロく、グロテスクなイメージ連続に私は夜な夜な悶えながらページを夢中で何度もめくりました。大人の階段を一歩登らされた(笑)一冊です。著者の作品の中でも話の筋の通った読みやすい長編ではないでしょうか。昭和初期の、隠微な世界にそそられる方は是非ご一読あれ。
この作品集がずっと欲しかったので、再度リリースされたことは非常に嬉しい。 実在の有名人ばかりが取り上げられているものかと思ったら、物語の登場人物など、架空の人物も多く、ちょっとそこは期待はずれでしたが。 実在の人物を描いた作品を通して、近代の猟奇犯罪史みたいなものを一望できる感じはありますね。圧巻はやはり丸尾末広による「甘粕正彦」でした。
ポスターにも出来る、というウリで大判本になっていますが、そんなに細かい描き込みがあるわけでもないので、普及版として小さいサイズの物が1500円とか1800円程度であれば良いと思います。やはり4000円では買うのに躊躇するので。そういう意味をこめて星を一つ減らしました。
ストロベリーソングオーケストラ、2010年のシングル。劇団員は出入りが激しそうなので置いておくとして、ピアニストとドラマーが交代したのが目立った変化(ドラムに関しては前任者も在籍したまま今回は別の人が叩いているということかな?)。とは言えピアノは、筋肉少女帯の三柴氏や五人一首の百田氏の影響を受けたような前任者の演奏スタイルを上手く踏襲しており、バンドの作風に変化は無い。フルアルバム「血の濫觴」からオイシイ所だけを抽出しまとめたような、かなり濃厚で充実した内容。「切断ダリア」のPVを収録したDVDが付属。音源だけだと十分には味わえない、このバンドが持つアングラ演劇の要素をPVで垣間見ることができるのが嬉しい。巨大なハサミを引きずるシルクハットの男・道化師・人さらい・殺人鬼といった風貌の、時計詩母さんの怪演が光ってます。 「切断ダリア」は思わず踊りだしそうなハイテンションさで疾走。激しいサウンドの中を、ピアノがめまぐるしくジャジーに駆け回り乱舞し、2人の女性コーラスが絶妙のハーモニーで飛び交い、吐き捨てるような男性ボーカルが血眼で転がり込んでくる。猟奇的で血生臭くも、切ない。女声中心のレトロで日本的な哀愁あるサビに男声が加わり、怒涛のラストシーンへ突っ込んでいく終盤は熱い!「木偶の縫子」系統の小粋な楽曲を、「狂れた埋葬虫、電波、赤マント!」や「血の軌跡が故の慟哭」等のような王道的な展開でやるとこうなる…といった感じの曲だ。名曲!「夢六道からくり糸車」は男声部が無い女性ボーカルメインの曲。JAシーザーの「絶対運命黙示録」みたいな合唱が強く耳に残る。攻撃的かつ叙情的、起伏ある曲展開。サビ?の凛とした力強さに胸打たれる。「黒い日曜日」はドラマチック、ホラーかつノリが良い。この曲かなり好き。日本の童謡・子守唄あるいは「かごめかごめ」や「花いちもんめ」の歌などを想起させる、郷愁・懐かしさとともに独特の怖さを持つメロディ。「誰が〜」と呼びかける哀愁ある女性ボーカルに、「嗚呼〜」と情感たっぷりに男性ボーカルが答えるサビの歌メロが素晴らしく、胸に染みる、何か熱いものが込み上げてくる。寺山修司の「かくれんぼの鬼とかれざるまま老いて誰をさがしにくる村祭」という短歌がフッと頭に浮かぶような詩世界も良い。「自分の影に捜索願を出し〜」という部分など、私が中学生の時に寺山修司に感化されてノートに書いていた詩にそっくりで、何だか甘酸っぱい気持ちになります。
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