と呼べる作品に出会わなくなりました。季節でいうと秋が最も似合うような、絹の手触りの物語に。 同感、と思われる方。このドラマはいい線を行ってると思います。 Vanessa Williamsのアルトによる『Alfee』をバックに、3人の淡々としていながらどこか華やかな日常が流れるサブタイトルシーンから、このドラマの心地よさは始まります。そして物語それ自体も、流れに逆らうことなく、滑らかに進みます。 中央のトライアングルを形作る3人がそれぞれ一つの旬にあって、田村さんは勿論、木村拓哉さんも‘演じ初めの硬さ’と‘演技に狎れすぎの柔らかさ’とのあいだの頃、宮沢りえさんはすこし本来の茶目っ気を取り戻しつつまだうつむき加減の頃。ドラマの仕上がりにとって、ベストタイミングのベストキャストがどれほど重要かがわかる作品でもあります。 脚本の池端俊策さんはこのドラマで初めて意識したのですが、大分前にこれもやはり好きだった『僕が彼女に、借金をした理由。』(真田広之・小泉今日子主演)がこの人の作品だったとつい最近知り、個人的にはなるほどと腑に落ちました。 OA当時の録画テープの劣化が進み、首を長くして待っていたDVD化がようやく決まりました。毎年秋になるとこれが観たくなってテープを出していたのですが、この秋からは心置きなく観られるのが何より嬉しいです。
1994年真田広之、小泉今日子主演でTBSで放送されたドラマのシナリオ。本文は完全なシナリオ形式で書かれているが簡潔で無駄のない文は慣れていない方にも読みやすいと思う。
動作説明とかセリフにつけられるカッコ書きが、はじめ煩く感じられるかもしれないけれど、役者はこんな指示に従ってセリフを言ったり、表情を作ってるのかとか分かって面白い。
平凡なサラリーマンの身の上に起きる数々の不幸な出来事。大事件は起きないけれど、ひとつひとつの出来事が他人事で済まされない。
それ故、話はコミカルに、ときにペーソスを漂わせながら描かれていて笑わせられるのに、何かがもやっと心にひっかかる。先が知りたくてどんどん読み進めてしまう。
シナリオに特化してみると、池端さんの書かれるシナリオはセリフとト書きの分量バランスがとても優れていて、良質なシナリオの教科書のよう。シナリオを学んでる方にはとにかくおススメ。
本を読んでドラマに興味を持たれる方もいるかと思うけれど、自分が調べた限りでは、残念ながらDVD化などされていない。ただTBSのオンデマンドではみられるようなので、環境がおありなら視聴可能だと思う。
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