この作品でクーパーが演じているプレイボーイ役は、本当はケーリー・グラントにやらせたかったとワイルダーは語っています。確かにそのほうがお似合いだったかもとも思いますが、しかし、クーパーでももちろん最高に楽しい作品であることに変りはありません。ワイルダー作品独特の、おしゃれでユーモラスで、ほのかにペーソスのある味わいは言葉で言い尽くせないほど魅力的です。またオードリーも、ラストシーンの繊細で切ない、なんともいとおしげなあの表情などは、「ローマの休日」の時よりも着実に演技力が向上しているのではないでしょうか。オスカー受賞時のスピーチで「これから勉強します。」と言っていたその勉強の成果でしょうか。個人的にはシュバリエも含めた主役陣とワイルダーの大ファンなので、文句の付けようのない素晴らしい作品です。(DVDに英語字幕が付いていないのは残念ですが。)
「昼下りの情事」は大好きな作品だが、ここ何十年もテレビでは吹替の放送もされず(2000年頃にテレビ東京で特別放送されたときも、字幕だった)新録でもいいので、ぜひとも池田昌子の声で見てみたいと思っていた。ようやく、この商品によって願いがかなった。
見る前は、失礼ながら池田さんのお歳を考えると正直不安だったが、実際は若い頃と変わらないすばらしいお声だった。オードリーが演じる、おきゃんでちょっと変わった(というよりオタクっぽい)アリアーヌは、池田昌子の声によって、さらに魅力的になっている。
共演のゲーリー・クーパーが黒沢良でないのはちょっと残念。が、黒沢氏はもう吹替はやらないということなので仕方がないだろう。代わりに小川真司が声を演じているが、意外にもこの映画のクーパーには、合っていた。低音かつ真面目な調子で、思いっきりボケをかましたりするので、何度か爆笑してしまった。
特典ディスクの「想い出のオードリー・ヘプバーン」は、グレゴリー・ペックをはじめ、多くの共演者や監督が証言している。オードリーのひたむきさや人物像がよく分かり、こちらも楽しめた。
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