07年01月の単行本の文庫化で,08年には『第10回大藪春彦賞』を受賞した作品でもあります.
ロードレースという,なじみの薄い題材だけに,専門的な内容もチラホラとは見られるものの, それが堅苦しさを感じさせず,また説明的過ぎることもないため,スムーズに入っていける印象. また,章を細かく分けたことで,退屈しかねないレースの場面がテンポよく回っていて読みやすく, 暗黙の了解やエースとアシストの存在と,勝負だけではない,その競技性にも新鮮な感覚を覚えます.
しかし,幕間の一コマを挟んでからは,意外な方向へと動き出すものの,どうも唐突さが拭えず, そこからの都合のよい駆け足な展開も,それまでからどんどん軽く,雑になっていくのが残念です. 最後にしても,一見は感動的で,そこから繋がるエピローグと,まとまっているようにも映りますが, その『決断』と『結果』は,『タイトルの意味』に改めて気づかされるものの,理解しがたいものが….
『勝利』に対し,対照的な態度を見せる二人の男が物語を引っ張り,レースの描写もよかっただけに, 中盤から結末,その後を含め,話の運びを受け容れられるかどうかが,評価の分かれ目になりそうです.
2010年4月に刊行された小説新潮5月号の文庫化。有川浩などおなじみの執筆陣の作品も良かったが、初めて読んださだまさしの作品にはビックリ。なかなかいいアンソロジーでした。
収録されている作品は、次のとおり。
・沢木耕太郎 「男派と女派 ポーカー・フェイス」
・近藤史恵 「ゴールよりももっと遠く」
・湊かなえ 「楽園」
・有川浩 「作家的一週間」
・米澤穂信 「満願」
・佐藤友哉 「555のコッペン」
・さだまさし 「片恋」
さだまさしの「片恋」は、意表を突くラブストーリー。最後のシーン、よかったなぁ。こんな小説が書けるなんてちょっとビックリ。彼の小説を読んでみたくなった。
有川浩の「陰部」の話も笑えた。実際にあったネタを元にしたのかは分からないけど、いかにもありそうな話。
近藤史恵のロードレースものも相変わらずいいし、佐藤友哉も良かったが、広いものは湊かなえの「楽園」。読ませる話を書く。
この「Story Seller」を読んで、今まで、読んだことがない作家の小説を読むことができたのは幸せだった。本当に、まだまだ面白い小説を書く人はいっぱいいるんだなぁ、読まず嫌いを反省した。
本書の7編はどれも個性的でなかなか楽しめました。
特に、米澤穂信さんの「玉野五十鈴の誉れ」は物語の展開の仕方が上手だし、不思議な空気を見事に表現した独特の味わいのある作品です。
また、道尾秀介さんの「光の箱」も印象深い秀作です。
そして、「プロトンの中の孤独」は、さすがに近藤史恵さんと思わせる充実した作品です。ただ、「サクリファイス」や「エデン」を読んでから読むほうがいい作品かもしれません。
最近はあまりフィクションを読まない私ですが、この本を読んで、本書の作家の他の作品も読んでみたくなりました。
読む価値が十分にある、質の高いアンソロジーだと思います。
ツール・ド・フランスの模様が初日から徐々に主人公視点で描かれているので、ツールやロードレースの勉強になりました。やっぱりこうして読んでいると、他のスポーツとは異なる競技であることがわかります。専門用語もチラチラ出てきますが、それを調べながら読むのもまた一興かな、と。
主人公(チカ)の考えが非常に好感が持てるのもいいですね。超一流というわけではなく、一歩引いたところにいる人物の描写が読者に親近感を与えていると思います。彼の信念に、「うんうん」と読んでいてひとり納得してしまいました。
前作同様、非常に軽快に読み進められます。面白いのも手伝って、私は三時間ほどで読み終わりました。この作品のさらに、続きが読んでみたいです。絶対に面白いと思いますしね。
嫌ミスです。 途中までは非常に面白いんですよね。 というより多くのオールドファンは現代版「銀仮面」を思い起こし、来るべき悲劇のクライマックスを予想したと思うんですが・・・
恐らくこの結末は悪い意味でだれも予想できないだろうなぁ、なんて思いながら巻を閉じました。 いったいこの作者は結局なにをやりたかったのか、今回私にはまったく理解できません。
結構好きな作家なんですけどね。 ちなみに私、この人と真梨幸子、岸田るり子の3人を「嫌ミス3人女子」と勝手に呼んでます。
|